生活・養生朝から夜までの過ごし方|アーユルヴェーダの1日
アーユルヴェーダの生活術ディナチャリヤ(1日の過ごし方)を、朝・昼・夜の時間帯ごとに解説します。舌磨き、白湯、オイルマッサージ、食事の時間、就寝までの流れと、日…
Dinacharyā / दिनचर्या
Definition
心身を整えるためにアーユルヴェーダがすすめる朝から夜までの1日の過ごし方(日課)で、歯磨き・入浴・食後の口直し・運動・夜の過ごし方までを含む。
この項目のポイント
朝、起きた瞬間からなんとなく体が重い。
時間に追われて、気づけば1日が終わっている。
夜はスマートフォンを見ているうちに、眠る時間がずるずる遅くなる。
それでも、早く起きて白湯を飲んだ日は、なぜか1日が軽く感じる。
その感覚は、たぶん正しいです。
アーユルヴェーダの古典には、朝起きてから夜眠るまでの過ごし方が、順番つきで書かれています。
それがディナチャリヤです。
あなたが体で感じている心地よさの多くは、すでにこの日課の中に名前があります。
ディナチャリヤ(Dinacharyā)は、「1日(ディナ)の過ごし方(チャリヤ)」を意味します。
アーユルヴェーダが心身の健康のためにすすめる、理想的な日課のことです。
自然界のリズムに沿って生活を整えることを大切にします。
健康な人が健康を保つための生活法(スワスタヴリッタ)の中心にある考え方でもあります。
| 時間帯 | 項目 | ひとことで |
|---|---|---|
| 起床 | 早起き(ブラフマムフルタ) | 日の出前の静かな時間に起きる |
| 朝 | ダンタダーヴァナ | 歯を清め、口の中から1日を始める |
| 朝 | ヴィヤーヤーマ | 力の半分までの運動で体を軽くする |
| 朝 | スナーナ | オイルケアのあとに入浴して清める |
| 朝 | ドゥーマパーナ | 薬草の煙で頭と喉をすっきりさせる古典の項目 |
| 食後 | タームブーラ | 口の中を清め、消化を助ける口直し |
| 夜 | ラートリチャリヤ | 軽い夕食と早めの就寝で眠りに向かう |
朝の項目は、外から体に触れるものから内側を動かすものへと進み、最後に入浴で清めて1日の活動に入る、という流れになっています。
アーユルヴェーダでは、1日の時間帯にもドーシャのリズムがあるとされます。
一般には、朝と夕方はカパ、昼と夜中はピッタ、明け方と午後はヴァータが優位になると説明されます。
朝のうちに体を動かすのは、重さが出やすいカパの時間帯に軽さを足すためと考えられています。
昼に主食をしっかりとるのは、アグニ(消化の火)が高まる時間帯だからとされます。
このリズムに合わせて過ごすことで、心身のバランスを保ちやすくなると考えられています。
舌磨きで、寝ているあいだについた舌の苔を落とす。
アビヤンガ(オイルによるセルフケア)で、全身をゆっくりほぐす。
どれも、朝の体を目覚めさせる小さな手入れです。
ダンタダーヴァナ(Danta Dhāvana)は、歯を清める行為を指します。
古典では、ニームなどの渋味・苦味を持つ木の小枝を噛んでほぐし、ブラシとして使う方法が記されています。
伝統的な朝の口腔ケアは、歯を清め、舌磨きで舌の苔を取り、ガンドゥーシャ(オイルプリング)で仕上げる、という流れです。
口の中の状態は、消化の状態を映すと考えられてきました。
そのため朝の口腔ケアは、衛生のためだけでなく、その日の体調を知る手がかりとしても扱われてきました。
ヴィヤーヤーマ(Vyāyāma)は、運動を指します。
ディナチャリヤの項目として挙げられ、体を軽くし、消化を助けるとされてきました。
古典には、運動は自分の力の半分までにとどめるという目安が記されています。
額や脇に汗がにじみ、呼吸が少し上がった段階が一つの区切りとされます。
やりすぎはヴァータを乱し、消耗につながると考えられてきました。
季節では春(カパが増える時期)、時間帯では朝に行うのが向くとされます。
体力(バラ)や体質によっては、アーサナのような穏やかな形が向くとされます。
スナーナ(Snāna)は、入浴や沐浴を指します。
体を清めるだけでなく、活力を支える行為として位置づけられてきました。
体には温かい湯、頭には熱すぎない湯、というのが伝統的な目安です。
頭を熱い湯で洗いすぎることは、目や髪によくないとされてきました。
アビヤンガのあとに入浴する順序が基本です。
食後すぐの入浴は、消化を妨げるため避けるべきとされています。
タームブーラ(Tāmbūla)は、キンマの葉に香辛料などを包んで噛むもので、インドではパーンとして知られています。
ディナチャリヤの項目として、古典にも登場します。
食後の口の中を清め、カパの粘りを減らし、消化を助けるとされてきました。
体質や状態によってはすすめられないとされ、古典にも条件が記されています。
現代の日本では、食後にフェンネルを噛む習慣のほうが実践しやすい形といえます。
古典のディナチャリヤには、いまの暮らしではあまり見かけない、煙を使う養生が2つ出てきます。
1つ目が、薬草の煙を吸い込むドゥーマパーナです。
ドゥーマパーナ(Dhūmapāna)は、ドゥーマ(煙)とパーナ(飲むこと)を合わせた言葉で、薬草を燃やした煙を専用の管で吸い込む処置を指します。
チャラカ・サンヒターでは、日課として行う穏やかなもの、潤いを与えるもの、強く排出を促すものなど、目的に応じた種類が区別されています。
頭や喉、呼吸の通り道にたまったカパを減らす目的で用いられてきました。
鼻から薬用オイルを入れるナスヤのあとに行う、という組み合わせもよく知られています。
体質や体調によって行ってはならない場合も細かく定められており、誰にでも勧められるものではありませんでした。
現代ではほとんど行われず、古典の記述として扱われることが多い処置です。
煙を吸い込むこと自体が呼吸器の負担になるため、自己流で試すのは避けてください。
2つ目が、薬草や樹脂を燻して、空間や物を清めるドゥーパナ(Dhūpana)です。
煙を体に取り込むドゥーマパーナとは違い、こちらは部屋や衣類、寝具、器具を煙にくぐらせて清めるものです。
ニームの葉やグッグルなどの樹脂、トゥルシーなどが用いられ、住まいの環境を整える文脈で古典に登場します。
スシュルタ・サンヒターでは、傷の手当てや、産後の母子が過ごす部屋を整える場面でも燻すことが記されています。
環境も健康の要素として扱うという発想があり、心の質であるサットヴァを保つ工夫の一つとしても語られます。
| ドゥーマパーナ | ドゥーパナ | |
|---|---|---|
| 煙の向かう先 | 体の中(鼻や口から吸う) | 空間や物 |
| 主な目的 | 頭と喉のカパを減らす | 部屋や衣類を清める |
| 現代の近いもの | 該当するものはほぼない | お香を焚いて空気を切り替えること |
お香を焚くと部屋の空気が切り替わる気がする、という感覚は、このドゥーパナの考え方と重なります。
取り入れるなら換気をしながら少量にとどめ、煙に敏感な方や小さな子ども、ペットのいる部屋では控えてください。
ラートリチャリヤ(Rātricaryā)は、ディナチャリヤのうち、夜の部分を指す言葉です。
眠りに向かうまでの整え方を定めたもので、基本の型は次のとおりです。
22時を過ぎるとピッタの時間帯に入り、いったん目が冴えてしまうとされます。
夜更かししたときに小腹が空くのは、この時間に消化の働きが動き出すためだと説明されます。
夜の過ごし方は、そのまま翌朝の目覚めにつながり、ニドラー(睡眠)の質を左右すると考えられています。
全部を明日から始める必要はありません。
まずは、起きたら白湯を1杯飲む。
夜は、いつもより30分だけ早く画面を閉じる。
この2つだけでも、1日の両端が整い始めます。
慣れてきたら、舌磨きや足へのオイルを1つずつ足していけば十分です。
持病がある方や体調に不安のある方は、運動や入浴の仕方を変える前に医師に相談してください。
本項目は伝統的な考え方の紹介であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。
ディナチャリヤはすべて実践しないと意味がありませんか?
いいえ。まず取り入れやすいもの(早起き、朝の白湯など)から始め、無理なく習慣にしていくことがすすめられています。
どのくらい運動すればよいのですか?
自分の力の半分までにとどめるという目安が古典に記されています。額や脇に汗がにじみ、呼吸が少し上がった段階が一つの区切りとされます。
お風呂のお湯の温度に決まりはありますか?
体には温かい湯、頭には熱すぎない湯というのが伝統的な目安です。アビヤンガのあとに入浴し、食後すぐの入浴は避けるのが基本とされます。
夜更かしすると小腹が空くのはなぜですか?
22時を過ぎるとピッタの時間帯に入り、消化の働きが動き出すためだと説明されます。いったん目が冴えてしまうのも同じ理由とされます。