アーユルヴェーダの用語・読みものを一語ずつ引けるオンライン辞典
ドーシャ・体質

ヴァータ

Vāta / वात

Definition

風と空の元素から成り、呼吸・循環・排泄・神経伝達など体の「動き」全般をつかさどるとされるドーシャ。働く場所と向きによって5つに分けられる。

この項目のポイント

  • ヴァータは風と空の性質を持ち、身体の「動き」全般をつかさどるとされる
  • 軽い・冷たい・乾いた・粗い・動くといった性質を持ち、乱れると冷えや乾燥、不安、眠りの浅さにつながると考えられる
  • 働く場所と向きによって、プラーナ・アパーナ・サマーナ・ウダーナ・ヴィヤーナの5つのヴァーユに分けられる
  • 取り込む、下へ出す、中心で分ける、上へ出す、全身へ行き渡らせる、という5つの向きで体の動きを整理するのがこの分類の特徴

冷えや眠りの浅さが気になる方へ

手足がいつも冷たい。

夜になっても考えごとが止まらず、眠りが浅い。

お通じのリズムが乱れやすく、肌も乾きがち。

こうした小さな不調が重なると、なんとなく落ち着かない感じが続きます。

その感覚は、気のせいではありません。

アーユルヴェーダでは、こうした状態をまとめて、ヴァータという動きの力が乱れたときの現れとして捉えてきました。

ばらばらに見える不調を、一つの見方で整理できるのがこの考え方です。

ヴァータとは

ヴァータ(Vāta)は、ドーシャの1つで、風(ヴァーユ)と空(アーカーシャ)の元素から構成されるとされるエネルギーです。

身体における運動・循環・呼吸・排泄・神経伝達など、あらゆる動きをつかさどると考えられています。

ピッタが変換を、カパが構造と安定を担うのに対し、ヴァータはそれらを動かす役割を持つと説明されます。

ヴァータの性質

軽い・冷たい・乾いた・粗い・動く、といった性質を持つとされます。

ヴァータが優位な体質の人は、細身で活動的、発想が豊かな傾向があると言われます。

秋から冬の乾燥した季節、不規則な生活、冷えや過労、移動の多い時期には、ヴァータが増えやすいとされます。

バランスが乱れると

ヴァータが過剰になると、冷え・乾燥・便秘・不安感・眠りの浅さなどとして現れやすいと考えられています。

軽い・冷たい・乾いた性質が強まりすぎた状態なので、整える方向はその反対です。

温かく、潤いがあり、落ち着いたものを取り入れることが、伝統的な整え方とされます。

ヴァータの5つの働き

ヴァータは、体のどこで、どの向きに動くかによって5つに分けられます。

それぞれをヴァーユ(風)と呼び、まとめてヴァータのサブドーシャ(下位分類)と言います。

名前主な場所向きと働き乱れたときの現れ方
プラーナ・ヴァーユ頭部と胸部取り込む(呼吸・嚥下・感覚)浅い呼吸、止まらない考えごと
アパーナ・ヴァーユ下腹部下へ出す(便・尿・月経)便通の乱れ、下腹部の張り
サマーナ・ヴァーユ胃と小腸中心で分ける(消化と分配)消化の不安定、張りやガス
ウダーナ・ヴァーユのどと胸の上部上へ出す(発声・意欲)声の出にくさ、意欲の低下
ヴィヤーナ・ヴァーユ心臓から全身行き渡らせる(循環・運動)手足の冷え、しびれ

取り込んだものを中心で分け、全身へ届け、不要なものを下へ出し、言葉や意欲として上へ出す。

5つのヴァーユは、この一続きの流れを分担していると考えると、つかみやすくなります。

どれか一つが乱れると、ほかの流れにも影響が出やすいとされます。

プラーナ・ヴァーユ(取り込む働き)

頭部と胸部を中心に、呼吸・嚥下・感覚の取り込みをつかさどるとされるのがプラーナ・ヴァーユです。

5つのヴァーユの中で、外から内へ入れる入口の役割を担います。

乱れると、呼吸が浅くなる、考えごとが止まらない、眠りが浅い、といった形で現れやすいとされます。

プラーナーヤーマ(呼吸法)や瞑想が伝統的に用いられてきたのは、この働きに直接関わるためです。

生命エネルギーそのものを指すプラーナと名前が共通していますが、こちらはヴァータの下位分類としての働きを指します。

アパーナ・ヴァーユ(下へ出す働き)

下腹部を中心に働き、便・尿・月経など、下方向への排出をつかさどるとされるのがアパーナ・ヴァーユです。

5つのヴァータの中でも、日常の不調と結びつきやすい分類とされます。

乱れると、便通の乱れ、下腹部の張り、月経の不調などとして現れやすいと考えられています。

冷え、不規則な生活、自然な欲求を我慢する習慣が、アパーナを乱すとされてきました。

浣腸を用いるバスティがヴァータの処置として重視されるのは、この働きに直接作用すると位置づけられているためです。

体から出ていくもの全般はマラ(老廃物)と呼ばれ、その出口を受け持つのがこの働きです。

サマーナ・ヴァーユ(中心で分ける働き)

胃と小腸のあたりに座を持ち、アグニ(消化の火)をあおり、消化されたものを組織へ分配するとされるのがサマーナ・ヴァーユです。

消化の火に風を送り、燃え方を一定に保つ役割と考えるとつかみやすくなります。

乱れると、消化が不安定になる、張りやガスが出る、食欲にムラが出る、といった形で現れやすいとされます。

不規則な食事時間が、この働きをもっとも乱すと考えられています。

同じ場所で消化そのものを担うパーチャカ・ピッタと組になって、消化を支えると説明されます。

ウダーナ・ヴァーユ(上へ出す働き)

のどと胸の上部に座を持ち、発声、話すこと、記憶や意欲といった上方向の働きをつかさどるとされるのがウダーナ・ヴァーユです。

乱れると、声が出にくい、言葉が続かない、意欲がわかない、といった形で現れやすいとされます。

プラーナーヤーマ(呼吸法)が働きかける対象の一つでもあります。

活力の精髄とされるオージャスとも結びつけて語られることがあります。

ヴィヤーナ・ヴァーユ(全身へ行き渡らせる働き)

心臓を中心に全身へ行き渡り、血液の循環、手足の動き、まばたきのような細かな運動までをつかさどるとされるのがヴィヤーナ・ヴァーユです。

取り込まれ、分けられた栄養を、体のすみずみの通り道であるスロータスへ届ける役割とされます。

乱れると、手足の冷え、しびれ、落ち着きのなさ、動作のぎこちなさとして現れやすいとされます。

アビヤンガのように全身をめぐらせるケアが向くとされる働きです。

日常の一手

ヴァータの乱れは、冷たい・乾いた・不規則、の3つが重なったときに起きやすいとされます。

だからこそ、その反対を少しずつ足していくのが伝統的な整え方です。

温かく消化のよい食事を、決まった時間にとる。

湯上がりにオイルで手足をなでる。

寝る前に、ゆっくり息を吐く時間をつくる。

どれも小さなことですが、動きすぎた風を落ち着かせる方向として、昔から伝えられてきました。

本項目は伝統的な考え方の紹介であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。

FAQよくある質問

ヴァータが増えやすいのはどんな時ですか?

秋から冬の乾燥した季節、不規則な生活、冷えや過労、移動の多い時などにヴァータが増えやすいとされます。

ヴァータの5種類とは何ですか?

働く場所と向きによって分けた5つの下位分類で、呼吸や取り込みのプラーナ・ヴァーユ、下への排出のアパーナ・ヴァーユ、消化を支えるサマーナ・ヴァーユ、発声や上への動きのウダーナ・ヴァーユ、全身の循環のヴィヤーナ・ヴァーユを指します。

プラーナ・ヴァーユとプラーナは同じものですか?

違います。プラーナは生命エネルギーそのものを指し、プラーナ・ヴァーユはヴァータの下位分類としての働きを指します。

なぜヴァータの養生でバスティが重視されるのですか?

浣腸を用いるバスティが、下方向への排出をつかさどるアパーナ・ヴァーユに直接作用すると位置づけられているためです。ヴァータの処置としてもっとも重要とされてきた理由でもあります。

ヴァータの乱れを整える日常の工夫はありますか?

温かく消化のよい食事、決まった時間の食事と睡眠、オイルで全身をめぐらせるアビヤンガ、ゆっくりした呼吸法などが、伝統的にヴァータを落ち着かせる方向とされてきました。