トリグナ(サットヴァ・ラジャス・タマス)
Triguṇa / त्रिगुण
Definition
心の性質を3つに分けるインド哲学の概念で、純粋性のサットヴァ、活動性のラジャス、停滞性のタマスからなる。体のドーシャと対をなす、心の側の物差しとされる。
この項目のポイント
- トリグナはサットヴァ(純粋性)・ラジャス(活動性)・タマス(停滞性)の3つからなる心の性質の分類
- 体の物差しであるドーシャに対し、トリグナは心の物差しとされる
- 3つに優劣はなく、行動にはラジャスが、眠りにはタマスが必要とされる
- 食事や生活、心の持ち方によってサットヴァを育てることが、心の養生の方向性とされてきた
気持ちの浮き沈みが気になる方へ
やることが多い日は、頭がずっと急いでいて落ち着かない。
反対に、何もする気が起きず、ぼんやりと一日が過ぎる日もある。
そして、ときどき、心が静かで物事がすっと見える日がある。
心にはいくつかの状態があって、日によって入れ替わっている。
そう感じたことがあるなら、その感覚は合っています。
インド哲学とアーユルヴェーダは、この心の入れ替わりを、3つの性質の配合として説明してきました。
それがトリグナです。
トリグナとは
トリグナ(Triguṇa)とは、心の性質を3つに分けて捉える、インド哲学とアーユルヴェーダに共通する概念です。
3つとは、純粋性・明晰さのサットヴァ(*Sattva*)、活動性・情熱のラジャス(*Rajas*)、停滞性・重さのタマス(*Tamas*)です。
誰の心にもこの3つがすべて備わっており、その時々の配合が、心の状態として現れると考えられてきました。
体の体質を見るドーシャが体の物差しなら、トリグナは心の物差しです。
アーユルヴェーダはこの2つを併せて、人の全体を見ようとします。
心の働きそのものを扱うマナスとあわせて読むと、位置づけがつかみやすくなります。
3つの性質
| 性質 | あらわすもの | 支えるもの | 多いときの現れ方 |
|---|---|---|---|
| サットヴァ | 純粋さ・調和・明晰さ | 澄んだ心、思いやり | 心の健やかさの目安とされる |
| ラジャス | 動き・活動・変化 | 意欲と行動の力 | 落ち着かなさ、焦り、興奮 |
| タマス | 重さ・停滞・不活発 | 休息と眠り | 無気力、鈍さ、こだわり |
大切なのは、3つに優劣はなく、どれも生きるために必要だということです。
行動にはラジャスが、眠りにはタマスが要ります。
そのうえで、心の健やかさの目安とされてきたのが、サットヴァが優位にある状態でした。
サットヴァ(純粋さと明晰さ)
サットヴァ(Sattva)は、3つの質のうち、純粋さ・調和・明晰さをあらわすものです。
心が静かで、物事をありのままに見られる状態と説明されます。
澄んでいて穏やかで、思いやりがある状態とも言われます。
新鮮で消化のよい食事、規則正しい生活、適度な運動、瞑想や呼吸法などが、サットヴァを増やす方向に働くとされてきました。
自然の中で過ごす時間や、穏やかな人間関係も、同じ方向に数えられます。
サットヴァが満ちることは、活力の精髄であるオージャスを養うこととも重なると語られます。
ラジャス(動きと活動)
ラジャス(Rajas)は、動き・活動・変化をあらわす質です。
行動を起こす力の源であり、意欲と情熱を支えます。
一方で、過剰になると落ち着かなさ、焦り、興奮、競争心、苛立ちとして現れやすいとされます。
刺激の強い食事、慌ただしい生活、夜遅くまでの活動、情報の摂りすぎなどが、ラジャスを増やす方向に働くと考えられています。
動きをつかさどるヴァータの乱れと、重なって現れることも多いとされます。
適度なラジャスは活動に必要とされ、悪いものとして扱われるわけではありません。
サットヴァとのバランスで捉えるのが、伝統的な見方です。
タマス(重さと停滞)
タマス(Tamas)は、重さ・停滞・不活発をあらわす質です。
休息や眠りに必要な質でもあり、安定を支えます。
過剰になると、無気力、鈍さ、惰性、こだわり、変化への抵抗として現れやすいとされます。
食べすぎ、消化しきれていない状態、運動不足、昼寝のとりすぎ、古いものや作り置きの食事などが、タマスを増やすと考えられてきました。
安定をつかさどるカパの乱れと、重なりやすい質です。
眠るためにはタマスが必要であり、質そのものが悪いわけではありません。
日中に増えすぎないよう、動きと軽さを取り入れるのが伝統的な調整です。
食事とトリグナ
アーユルヴェーダでは、食べるものが心の質に影響すると考えられてきました。
新鮮で自然に近い食事はサットヴァを育てるとされます。
刺激の強いもの、辛すぎるものはラジャスを増やすとされます。
古くなったもの、重すぎるものはタマスを増やすとされます。
心を整えたいときに、まず台所から見直すという発想は、体と心を分けないアーユルヴェーダらしい知恵です。
日常の一手
心が急いでいる日は、ラジャスが少し多いだけと捉えてみる。
何もしたくない日は、タマスが休ませようとしていると捉えてみる。
そのうえで、新鮮な食事をとる、夜は早めに画面を閉じる、数分だけ深く呼吸する。
心の状態を責めるのではなく、配合が偏っているだけと見て、暮らしを少し調整する。
トリグナは、そのための穏やかな地図です。
本項目は伝統的な考え方の紹介であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。
FAQよくある質問
トリグナとは何ですか?
インド哲学とアーユルヴェーダで説かれる、心の性質を3つに分ける概念です。明晰で穏やかなサットヴァ、活動と興奮のラジャス、重さと停滞のタマスからなり、誰の心にも3つすべてが備わっていて、その配合が心の状態として現れると考えられています。
サットヴァ・ラジャス・タマスはどう違いますか?
サットヴァは澄んで穏やかで思いやりのある状態、ラジャスは活動的だが落ち着きなく焦りや苛立ちに傾きやすい状態、タマスは重く沈んで無気力に傾きやすい状態と説明されます。どれも必要な性質ですが、サットヴァが優位な状態が心の健やかさとされてきました。
ラジャスやタマスは悪いものですか?
違います。適度なラジャスは活動に必要とされ、眠るためにはタマスが必要です。質そのものが悪いのではなく、増えすぎたときに落ち着かなさや無気力として現れやすいと考えるのが伝統的な見方です。