施術・トリートメント部位別バスティの選び方|腰・膝・首の違い
腰に行うカティバスティ、膝に行うジャーヌバスティ、首に行うグリーヴァーバスティ。名前は似ていますが、対象の部位も向いている悩みも異なります。3つの局所バスティの…
Abhyaṅga / अभ्यङ्ग
Definition
温めた薬用オイルを全身に塗布してなじませる、アーユルヴェーダのオイルマッサージ。頭・顔・足など部位ごとの形もあり、乾燥や疲れをやわらげ、心を落ち着かせる養生とされる。
この項目のポイント
季節の変わり目に肌がかさつく。
手足が冷えて、布団に入ってもなかなか眠れない。
そんな日に、温かいお風呂や手のぬくもりが恋しくなるのは、とても自然な感覚です。
アーユルヴェーダでは、この乾きと冷えをヴァータの性質として捉えてきました。
そして、温めたオイルで体に触れることを、日々の養生の中心に置いてきました。
それがアビヤンガです。
アビヤンガ(Abhyaṅga)は、温めた薬用オイルを全身に塗布し、手のひらでていねいになじませていく、アーユルヴェーダのオイルマッサージです。
サンスクリット語で「油を塗ること」を意味します。
サロンで受ける本格的な施術から、自宅で行うセルフケアまで、さまざまな形で親しまれてきました。
アーユルヴェーダでは、オイルが肌になじむことで体の乾きや冷えがやわらぎ、こわばりや疲れがほぐれると考えられてきました。
とくに、乾燥・冷え・動きすぎといった性質をもつヴァータを落ち着かせる養生として重視されます。
触れて温めるという行為そのものが、心を安らげる助けになるとも伝統的に語られてきました。
アビヤンガは全身に行うのが基本ですが、部位ごとに名前のついた形もあります。
全身を行う時間がない日でも、どれか一つだけなら続けやすい。
部位ごとの形は、そうした日々の暮らしに合わせた選択肢として受け継がれてきました。
シローアビヤンガ(Śiro Abhyaṅga)は、頭部と頭皮へのオイルマッサージです。
全身のアビヤンガの一部として、あるいは単独で行われます。
頭部はタルパカ・カパの座とされ、感覚器官を養う領域と考えられています。
眠りの浅さや頭の緊張の文脈で用いられてきました。
オイルには、ブリンガラージを煮出したものなどが使われます。
頭部へのオイルの処置には、ほかに額にオイルを流すシロダーラや、頭にオイルを溜めておくシローヴァスティがあり、シローアビヤンガはその中でいちばん身近な形です。
ムカアビヤンガ(Mukha Abhyaṅga)は、顔へのオイルマッサージです。
顔には多くのマルマ(急所)があるとされ、その位置を意識しながら行われます。
肌の色つやは、ブラージャカ・ピッタの働きとされます。
オイルは体質に合わせて選ばれます。
熱がこもりやすい場合は冷ます性質のもの、乾燥している場合は温める性質のものが選ばれます。
パーダビヤンガ(Pādābhyaṅga)は、足、特に足裏へのオイルマッサージを指します。
全身のアビヤンガが難しい日でも、ここだけは行う価値があるとされてきた部位です。
足裏には重要なマルマがあるとされ、目や睡眠との結びつきが古典で語られてきました。
ヴァータは冷えと乾燥の性質を持つため、末端を温めることが落ち着きにつながると説明されます。
眠り(ニドラー)を大切にする養生の中で、とくに取り入れやすい形です。
全身のケアが難しい日でも、耳と足裏だけは行うという形もよく紹介されます(耳のケアはカルナプーラナ)。
アビヤンガは、本格的な浄化法であるパンチャカルマの準備段階でも欠かせない工程とされています。
油を用いる前処置であるスネハナのうち、体の外側から行うものにあたります。
オイルで全身を整えてから、額にオイルを垂らすシロダーラなどの施術へ進む流れが知られています。
体をゆるめて、次の手当てを受けやすくする役割があると考えられています。
アビヤンガのオイルは、どれでもよいわけではありません。
体質と季節に合わせて選ぶ、というのが伝統的な考え方です。
基本になるのはごま油です。
温める性質と重い性質を持つとされ、乾きと冷えをかかえやすいヴァータに向く油として、古くから標準的に使われてきました。
一方で、暑い季節や、体に熱がこもりやすいピッタの傾向がある人には、冷ます方向の油が選ばれます。
その代表がココナッツオイルです。
サロンで使われる薬用オイルは、こうした油を土台にハーブを煮出して作られます。
夏になると、ごま油のアビヤンガがなんだか重たく感じる。
その感覚は、アーユルヴェーダの考え方とよく重なっています。
ココナッツオイル(Nārikela Taila)は、ココヤシの実から採れる油です。
サンスクリット語では、ココヤシをナーリケーラと呼びます。
アーユルヴェーダでは冷ます性質を持つ油とされ、熱がこもりやすいピッタや、暑い季節のアビヤンガに向くとされてきました。
ココヤシがよく育つ南インドでは、暮らしの油として広く用いられてきました。
頭につけるオイルの土台としても、なじみ深い油です。
ごま油は温める方向、ココナッツオイルは冷ます方向。
この2つを季節と体質で選び分けるのが、伝統的な使い方です。
反対に、冷えが気になる時期や、重さを感じやすいカパの傾向が強いときは、冷ます油より温める油が選ばれます。
日本で手に入るココナッツオイルは、気温が低いと白く固まります。
湯せんで溶かし、人肌程度に温めてから使うのが一般的です。
体がむくんだように重く、オイルを塗るとかえってべたつく気がする日もあります。
アーユルヴェーダには、そんな日に向けて、油ではなく粉で体をこする手技が伝わっています。
ウドヴァルタナ(Udvartana)は、豆の粉やハーブの粉を用いて体をこする手技です。
オイルで潤すアビヤンガとは逆に、乾いた素材で軽くする方向に働くとされます。
重く湿った性質を持つカパが増えているときに用いられ、体を軽くし、めぐりを促す目的で行われてきました。
アシュターンガ・フリダヤの日課を説く部分でも、アビヤンガや運動と並んで、カパを減らし脂肪(メーダス)をとかす手当てとして挙げられています。
粉には、穀物や豆の粉、トリファラなどのハーブの粉が使われます。
毛の流れに逆らう向き、つまり手足の先から体の中心へ向かってこするのが、伝統的なやり方とされます。
粉だけで行う乾いた形のほか、オイルと組み合わせる形もあります。
春の養生(ヴァサンタ・リトゥ)や、冬にためこんだ重さが気になる時期の手当てとして、よく名前が挙がります。
乾燥しやすい肌や、ヴァータの乾きが強いときは、こする刺激が負担になることがあります。
肌の弱い方は、狭い範囲で試すか、施術者に相談してから受けると安心です。
セルフアビヤンガは、ディナチャリヤ(1日の過ごし方の養生)の一部としても知られています。
人肌程度に温めたオイルを、手足の末端から体の中心へ向かってやさしくなじませる方法が一般的です。
使うオイルの種類や量は、体質や季節によって選ばれます。
最初から全身でなくてかまいません。
夜、眠る前に太白ごま油を足裏に塗って靴下を履く、という形なら1分で終わります。
肌に合うかどうかは個人差があるため、はじめは狭い範囲で試すのが安心です。
肌トラブルや持病がある場合は無理をせず、専門家に相談することがすすめられます。
本項目は伝統的な考え方の紹介であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。
アビヤンガとは何ですか?
温めた薬用オイルを全身に塗布し、手のひらでなじませていくアーユルヴェーダのオイルマッサージです。サンスクリット語のアビヤンガは「油を塗ること」を意味し、日々の養生から本格的な浄化法の一部まで幅広く行われてきました。
アビヤンガは自宅でもできますか?
自宅で行うセルフアビヤンガも古くから親しまれています。人肌程度に温めたオイルを手足の末端から中心へ向かってなじませる方法が一般的です。オイルの種類や体質に不安がある場合、また肌トラブルや持病がある場合は専門家に相談してください。
全身が難しい日はどうすればいいですか?
足裏へのパーダビヤンガだけでも行う価値があるとされてきました。夜、眠る前に太白ごま油を塗って靴下を履くという形なら1分で終わります。
頭や顔だけのアビヤンガもありますか?
あります。頭部と頭皮へのものをシローアビヤンガ、顔へのものをムカアビヤンガと呼びます。シローアビヤンガは眠りの浅さや頭の緊張の文脈で、ムカアビヤンガは顔のマルマを意識しながら行われてきました。
アビヤンガのオイルはどう選べばいいですか?
基本は温める性質のごま油で、冷えや乾きが気になる季節に向くとされます。暑い季節や熱がこもりやすいときは、冷ます性質のココナッツオイルが選ばれてきました。重さが気になるときは、油を使わず粉でこするウドヴァルタナという形もあります。