アーユルヴェーダの用語・読みものを一語ずつ引けるオンライン辞典
食事・食養生

アーハーラ

Āhāra / आहार

Definition

食事そのもの、および何を・いつ・どのように食べるかまでを含む食べるという行為の全体を指す言葉で、その作法はアーハーラヴィディとして古典にまとめられている。

この項目のポイント

  • アーハーラは食事を指すが、何を食べるかだけでなく、いつ・どのように食べるかまでを含む
  • 食べ方の原則はアーハーラヴィディ(食事の作法)として古典に具体的に並べられている
  • 温かいものを、適量で、前の食事が消化してから、落ち着いて食べることが基本とされる
  • 食材選びより先に食べ方を整えるという順序は、消化力アグニを重視する考え方と一貫している
  • はちみつ(マドゥ)は加熱しない・ギーと同量で合わせないのが古典の原則、岩塩(サインダヴァ)は塩の中で最も良質とされる

何を食べればいいか迷う方へ

体にいい食材を調べるほど、情報が多すぎて何を選べばいいのか分からなくなる。

同じものを食べても、落ち着いて食べた日と、急いでかき込んだ日では、あとの体の感じが違う。

その違いに気づいているなら、あなたの感覚はアーユルヴェーダの見方とぴったり重なっています。

アーユルヴェーダは、何を食べるかと同じくらい、どう食べるかを大切にしてきました。

食事という行為の全体を指す言葉が、アーハーラです。

アーハーラとは

アーハーラ(Āhāra)は、食事を指す言葉です。

ただし、何を食べるかだけでなく、いつ、どのように食べるかまでを含む広い概念として使われます。

アーユルヴェーダでは、食事は睡眠(ニドラー)と並んで、生命を支える柱の一つとされます。

この考え方はトラヨーパスタンバ(3つの支柱)として知られています。

食べものと食べ方の関係

アーハーラを2つに分けると、つかみやすくなります。

見る軸中身関わる考え方
何を食べるか食材、味、組み合わせラサ(6つの味)、ヴィルッダ・アーハーラ
どう食べるか量、時間、場所、心の向きアーハーラヴィディ、マートラー
誰が食べるか体質、慣れ、消化力サートミヤ、アグニ

アーユルヴェーダの古典は、このうち「どう食べるか」を先に整えるよう求めています。

アーハーラヴィディ(食事の作法)

アーハーラヴィディ(Āhāra Vidhi)は、食べ方についての原則を指します。

チャラカ・サンヒターなどの古典には、具体的な作法が並べられています。

  • 温かいものを食べる
  • 適度に油分のあるものを選ぶ
  • 適量を守る
  • 前の食事が消化してから食べる
  • 互いに合わない組み合わせを避ける
  • 落ち着いた場所で、集中して食べる
  • 急ぎすぎず、遅すぎず食べる
  • 話したり笑ったりしながら食べない
  • 自分に合ったもの(サートミヤ)を選ぶ

一つひとつは当たり前に見えますが、どれも消化の火を乱さないための工夫として読めます。

なぜ作法を定めるのか

同じものを食べても、状況によって消化のされ方が変わるためです。

温かいものは消化の火を助け、冷たいものは火を弱めると考えられています。

量が多すぎれば火は押しつぶされ、少なすぎれば体を支えきれない。

前の食事が残っているうちに次を入れると、未消化のもの(アーマ)がたまりやすいとされます。

心が落ち着かないまま食べることも、消化を乱す原因として挙げられてきました。

だからこそ、食材の選択より前に、この土台を整えることが求められます。

この順序は、消化力であるアグニを重視する考え方と一貫しています。

体に合う食事という考え方

何が良い食事かは、人によっても、そのときの状態によっても変わります。

そのときの状態に合った食事をパティヤと呼び、合わないものと区別してきました。

1日のどの時間に何を食べるかは、ディナチャリヤ(1日の過ごし方)の中でも語られています。

台所の2つの基本食材

アーハーラの話をすると、食材の細かな良し悪しに目が向きがちです。

けれど古典が繰り返し名前を挙げるのは、むしろ毎日の台所にある素朴なものです。

チャラカ・サンヒターには、日々摂ってよいものの一覧があり、米や緑豆、ギーと並んで、はちみつと岩塩が入っています。

甘味と塩味という、食卓の味の土台をつくる2つです。

食材味伝統的な扱いの要点
はちみつ(マドゥ)甘味に渋味を伴う加熱しない、ギーと同量で合わせない
岩塩(サインダヴァ)塩味塩の中で最も良質とされ、少量を使う

はちみつ(マドゥ)

はちみつ(Madhu)は、甘いのに重たくならない、少し不思議な食材です。

砂糖菓子を食べたあとのもったり感が、はちみつではあまり残らない。

そう感じたことがあるなら、その感覚はアーユルヴェーダの見方と重なります。

はちみつは甘味を持ちながら渋味を伴い、体を軽くする方向に働くとされます。

甘いものの多くはカパを増やしやすいとされるなか、はちみつはカパが増えているときにも使える甘味として扱われてきました。

ほかの素材の働きを体の奥へ運ぶ、運び役としても重んじられます。

ハーブの粉をはちみつで練って摂るのは、このためです。

加熱しないという原則

はちみつについて、古典がとくに強く戒めているのが加熱です。

加熱したはちみつは性質が変わり、体に負担のかかるものになると考えられてきました。

温かい飲みものに入れるときは、飲める温度まで冷ましてから加えるのが伝統的な扱いです。

はちみつを使った焼き菓子や煮込みも、この考え方からすると勧められない使い方になります。

ギーと同じ量で合わせない

もう一つよく知られているのが、はちみつとギーを同じ量で合わせることを避ける、という教えです。

どちらも単独では良いものとされながら、等量で混ぜると合わない組み合わせになるとされます。

こうした食べ合わせの考え方は、ヴィルッダ・アーハーラの項目で詳しく扱っています。

岩塩(サインダヴァ)

サインダヴァ(Saindhava)は、岩塩を指します。

名前は、インダス川流域の地方(シンドゥ)に由来するとされます。

古典では複数の塩が分類されていますが、その中で最も良質とされるのがこの岩塩です。

チャラカ・サンヒターでも、塩のなかで最も体に合うものとして名前が挙げられています。

塩味はヴァータを鎮める一方、ピッタとカパを増やしやすいとされます。

岩塩はその中でも比較的おだやかで、消化を助けるとされてきました。

ほかの塩が刺激や熱を持ちやすいとされるのに対し、岩塩は穏やかな側に置かれ、目のためにもよい素材として古典に挙げられています。

使い方はあくまで少量です。

タクラ(薄めたヨーグルトの飲みもの)にひとつまみ加える、食事の味をととのえる、といった形で用いられてきました。

日本でヒマラヤ岩塩として売られているものも、この岩塩の流れにある塩です。

塩味の摂りすぎが体に重さやむくみを残すと考えられている点は、岩塩でも変わりません。

日常の一手

食材を変えなくても、今日から実行できる作法があります。

スマートフォンを置いて、食べることだけに集中する。

急ぎすぎず、遅すぎず、ひと口ずつ味わう。

お腹が空いていないときは、時間だけで食べない。

この3つだけでも、アーハーラヴィディの中心はおさえられます。

本項目は伝統的な考え方の紹介であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。

FAQよくある質問

アーハーラとは何ですか?

食事を指す言葉ですが、何を食べるかだけでなく、いつ、どのように食べるかまでを含む広い概念として使われます。

アーハーラヴィディとは何ですか?

食事の作法を指します。温かいものを食べる、適量を守る、前の食事が消化してから食べるなど、具体的な原則が古典に並べられています。

食材選びと食べ方はどちらが先ですか?

食べ方が先とされます。同じものを食べても状況によって消化のされ方が変わるためで、この順序は消化力であるアグニを重視する考え方と一貫しています。

すぐに取り入れられる原則はどれですか?

落ち着いた場所で集中して食べること、急ぎすぎず遅すぎず食べることは、食材を変えなくても今日から実行できる項目です。

はちみつを温かい飲みものに入れてもよいですか?

古典でははちみつの加熱を避けるべきとしているため、飲める温度まで冷ましてから加えるのが伝統的な扱いです。また、ギーと同じ量で合わせることも避けるとされています。