生活・養生食欲がない朝の正体、サーマかニラーマか
朝に食欲がわかない理由は一つではありません。アーユルヴェーダのサーマ・ニラーマという物差しから、その食欲のなさが単なる空腹の合図なのか、アーマ(未消化物)のサイ…
Āma / आम
Definition
消化しきれなかったものが体にたまってできる「未消化物」。アーユルヴェーダでは不調の根本原因と考えられている。
この項目のポイント
夜遅くにしっかり食べた翌朝、体が重くて起き上がりにくい。
鏡で舌を見ると、いつもより白っぽい。
食欲もわかず、頭もすっきりしない。
この感じには、ちゃんと理由があります。
アーユルヴェーダは、消化しきれなかったものが体に残った状態として、この重さを説明してきました。
その残りものの名前が、アーマです。
アーマ(Āma)は、サンスクリット語で「未消化・生(なま)」を意味する言葉です。
熟していない果物を指すときにも使われる語で、まだ火が通りきっていないもの、というニュアンスを持ちます。
アーユルヴェーダでは、アグニ(消化の火)が弱って食べたものを消化しきれないと、その残りが粘つく未消化物となって体にたまると考えます。
アシュターンガ・フリダヤでは、消化の火の力が弱いために熟しきらなかった最初の組織(ラサ)が、胃にとどまって質を損ねたものをアーマと呼ぶ、という趣旨の説明があります。
アーマは、次のような性質を持つとされます。
| 性質 | 体での現れ方の例 |
|---|---|
| 重い | 体のだるさ、起きにくさ |
| 粘る | 舌の苔、ねばついた便 |
| 冷たい | 消化の火をさらに弱める |
| においが強い | 便や口のにおい |
重く冷たい性質は、消化の火をさらに弱めます。
火が弱るとまたアーマが生まれる、という循環に入りやすいのが、アーマの厄介なところとされます。
アーユルヴェーダには、多くの病はアーマから始まるという考え方があります。
アーマは、体の通り道であるスロータスに付着して流れを妨げるとされます。
そこにドーシャの乱れが重なると、だるさや重さ、めぐりの滞りなど、さまざまな不調の土台になると考えられてきました。
ドーシャの乱れにアーマが絡んでいる状態はサーマと呼ばれ、絡んでいない状態のニラーマと区別されます。
サーマのうちは強い浄化を急がない、という手当ての順番は、サーマ・ニラーマの節で扱っています。
アーマは、何を食べたかだけで生まれるわけではありません。
伝統的には、次のようなことがアーマを生みやすいとされてきました。
前の食事が消化されないうちに次を食べること。
食べすぎること。
冷たいもの、重いもの、油の多いものに偏ること。
組み合わせると消化に負担がかかるとされる食べ合わせ(ヴィルッダ・アーハーラ)。
心配や怒りを抱えたまま急いで食べることも、消化を乱すものとして挙げられます。
伝統的には、朝起きたときの舌の白い苔、体の重だるさ、食欲がわかない、頭がすっきりしない、といった状態がアーマの目安として語られてきました。
アーユルヴェーダで舌を観察し、舌磨きを朝の習慣にするのはこのためです。
日本語ではアーマを毒素と訳すことがあります。
けれど、もとの意味は外から入ってくる毒ではなく、自分の消化が追いつかなかったもの、です。
だから対策も、何かを強く出すことより、火を整えて消化しきることが中心になります。
対策の基本は、アーマを取ることより作らないこと、つまりアグニを整えることだとされます。
規則正しい食事、食べすぎないこと、冷たいもの・重いものを控えることが、日常の養生としてすすめられます。
すでに重さを感じるときは、食事を軽くして体を休ませるランガナの考え方が用いられます。
白湯や、生姜・黒こしょうなど温めるスパイス(トリカトゥ)の活用、消化と排出を助けるハーブとしてのトリファラも、よく登場します。
たまったアーマへの本格的なアプローチとしては、パンチャカルマのような浄化法が知られていますが、これは専門家のもとで行うものです。
本項目は伝統的な考え方の紹介であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。体調に不安がある場合は医療機関・専門家に相談してください。
アーマとは何ですか?
サンスクリット語で「未消化・生(なま)」を意味する言葉で、アグニ(消化の火)が弱って消化しきれなかったものが、体にたまった状態を指すアーユルヴェーダの概念です。
アーマは毒素と同じ意味ですか?
日本語では毒素と訳されることがありますが、もとの意味は未消化、熟していないものです。外から入る毒ではなく、自分の消化が追いつかなかった結果として内側に生じるもの、という点が要になります。
アーマがたまっているサインはありますか?
伝統的には、朝の舌の白い苔、体の重だるさ、食欲のなさ、においの強い便などが目安として語られてきました。あくまで伝統的な観察の目安であり、気になる症状は医療機関に相談してください。