アーユルヴェーダの用語・読みものを一語ずつ引けるオンライン辞典
食事・食養生

キチャリ

Khichaṛī / खिचड़ी (Kitchari)

Definition

ムング豆と米をスパイスとともに柔らかく煮た、インドの伝統的なおかゆ。消化にやさしく滋養があるとされ、アーユルヴェーダで体を休ませたいときの基本食として親しまれてきた。

この項目のポイント

  • キチャリはムング豆と米をスパイスと煮込んだ、インドの伝統的なおかゆ
  • 材料のムドガ(緑豆)は豆の中でもっとも軽く消化しやすい、シャーリ(米)は甘味を持つ主食とされる
  • 消化にやさしく滋養もあるとされ、三つのドーシャすべてに合う基本食と伝統的に説明される
  • パンチャカルマ(浄化法)の期間中の食事としても定番

疲れた日に、やわらかいものが欲しくなる方へ

食べすぎが続いた週末のあと。

忙しさで胃が縮こまっている夜。

そんな日は、揚げものや肉より、湯気の立つおかゆが恋しくなる。

その欲しがり方は、体がよく分かっている証拠です。

アーユルヴェーダには、まさにそういう日のための一皿があります。

豆と米を一緒に煮た、キチャリです。

キチャリとは

キチャリ(Kitchari)は、皮むきのムング豆(緑豆)と米を、ターメリックやクミンなどのスパイス、ギーとともに柔らかく煮込んだ、インドの伝統的なおかゆです。

インド亜大陸全域で家庭の味として食べられてきた料理ですが、アーユルヴェーダの文脈では特別な位置をもっています。

消化にやさしく、それでいて滋養がある。

体を休ませたいときに立ち返る、基本の一皿です。

なぜ休ませる食事なのか

キチャリの構成には理由があります。

豆類は一般に消化に重いとされますが、皮むきのムング豆はその中で最も消化しやすいと伝統的に説明されてきました。

それを米と一緒に柔らかく煮ることで、たんぱく質と炭水化物を一皿で、消化の火(アグニ)に負担をかけにくい形で摂ることができます。

ターメリックやクミン、ショウガなどのスパイスとギーがアグニを支え、6つの味(ラサ)のバランスも取りやすい。

三つのドーシャのいずれにも合う(トリドーシック)とされるのは、この設計ゆえです。

2つの材料を古典で読む

キチャリの主役は、豆と米の2つだけです。

どちらも、古典のなかで日々の食事に向くものとして名前が挙がる食材です。

チャラカ・サンヒターには、毎日摂ってよいものの一覧があり、そこにシャーリ米、ムドガ、岩塩、はちみつ、ギーなどが並びます。

キチャリは、その一覧の中身を1つの鍋にまとめたような料理ともいえます。

材料サンスクリット語伝統的な位置づけ
緑豆(ムング豆)ムドガ豆の中でもっとも軽く、消化しやすい
米シャーリ甘味を持ち、主食として三つのドーシャに使いやすい

ムドガ(緑豆)

ムドガ(Mudga)は、緑豆(ムング豆)を指します。

日本ではもやしの原料としておなじみの豆です。

アーユルヴェーダでは、豆類の中でもっとも軽く、消化しやすいとされてきました。

チャラカ・サンヒターでは、豆類のなかで最も優れたものとしてムドガの名が挙げられています。

豆はたいてい重くガスを生みやすいと考えられるなか、ムドガだけは体調が整わないとき、消化力が落ちているとき、回復期の食事にも選ばれてきました。

皮を取り除いて割ったもの(ムングダール)は、さらに軽いとされます。

キチャリが黄色く仕上がるのは、この皮むきの割り豆とターメリックを使うためです。

豆の重さが気になる方は、煮るときにヒングをひとつまみ加える使い方も、インドの台所ではよく知られています。

シャーリ(米)

シャーリ(Śāli)は、米を指します。

甘味を持ち、3つのドーシャすべてに使いやすい主食とされます。

古典では、品種や収穫の時期による違いまで細かく分類されており、米が食事の中心に置かれていたことがうかがえます。

なかでも赤みを帯びた品種(ラクタシャーリ)は、穀物のなかで最も体に合うものとして古典に名前が挙がります。

扱い方にも決まりがあります。

炊きたての温かい状態が最も良いとされ、冷えたものや作り置きは重くなると考えられてきました。

収穫したばかりの新米は重く、少し寝かせた米のほうが軽いという見方も伝統的に語られます。

キチャリを作るときも、その日に食べる分をその都度煮るほうが、この考え方に沿っています。

パンチャカルマとキチャリ

キチャリが最も活躍するのが、アーユルヴェーダの本格的な浄化法パンチャカルマの期間です。

浄化の間は消化力が落ちるとされるため、食事は消化への負担が最小限で、かつ体力を保てるものが求められます。

その答えが、何日続けても飽きず、胃腸を疲れさせないキチャリでした。

食事を軽くして体を休ませるランガナの考え方とも、よく噛み合います。

現代のリトリートやファスティング明けの回復食として使われるのも、同じ発想です。

家庭での取り入れ方

作り方はシンプルで、洗ったムング豆と米を、スパイスとともに水から柔らかく煮て、塩とギーで仕上げるだけです。

食べすぎた翌日や、疲れて食欲がわかない日の一皿として取り入れやすい料理です。

豆と米の割合や水加減、スパイスは体調に合わせて自由に調整できます。

水を多めにしてさらさらに煮れば軽く、少なめにしてもったりさせれば満足感のある一皿になります。

持病や食事制限がある場合は、専門家に相談のうえ取り入れてください。

本項目は伝統的な考え方および一般的な情報の紹介であり、特定の効果・効能を保証したり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。

FAQよくある質問

キチャリとは何ですか?

皮むきのムング豆(緑豆)と米を、ターメリックやクミンなどのスパイスとともに柔らかく煮込んだ、インドの伝統的なおかゆです。消化にやさしく滋養があるとされ、アーユルヴェーダでは体を休ませたいときの基本食として親しまれてきました。

ムング豆は日本の緑豆と同じものですか?

同じ豆です。もやしの原料としても知られる緑豆で、インドではムング、サンスクリット語ではムドガと呼ばれます。キチャリには皮をむいて割ったムングダールを使うと、より軽く煮上がるとされます。

日本のお米で作ってもよいですか?

作れます。インドではバスマティ米がよく使われますが、決まりではありません。炊きたての温かい状態がよいとされるのは米全般に共通する考え方なので、作り置きより、食べる分をその都度煮るほうが伝統に沿っています。

キチャリはどんなときに食べるとよいですか?

食べすぎが続いたとき、疲れて消化が重いとき、体調を崩した後の回復食などに向くとされてきました。アーユルヴェーダの浄化法パンチャカルマの期間中の食事としても定番です。