アーユルヴェーダの用語・読みものを一語ずつ引けるオンライン辞典
施術・トリートメント

マルマ

Marman / मर्मन्

Definition

生命エネルギーが集まるとされる体の急所・重要点のこと。古典では全身に107あるとされ、マルマを意識したオイルトリートメント(マルマ療法)が伝統的に行われてきた。

この項目のポイント

  • マルマは筋肉・血管・靱帯・骨・関節が交わる、生命エネルギーの要所とされるポイント
  • 古典スシュルタ・サンヒターで全身に107あると体系化された
  • 現代ではマルマをやさしく刺激するオイルトリートメント(マルマ療法)として親しまれている
  • 組織による5分類と、傷ついたときの結果による分類があり、頭・心臓・膀胱の3つはトリマルマとして特に重く扱われる

疲れると、つい押したくなる場所

肩の付け根、こめかみ、足の裏。

疲れたとき、つい手が伸びて押さえたくなる場所があります。

体には、ほかより大切に扱いたくなる場所がある。

その感覚は、アーユルヴェーダが古くから体の地図として書き残してきたものと重なります。

マルマとは

マルマ(Marman)とは、サンスクリット語で急所・要所を意味する、生命エネルギーが集まるとされる体の重要点です。

古典では、筋肉・血管・靱帯・骨・関節という5つの要素が交わる場所と定義されています。

外科の祖と呼ばれるスシュルタ・サンヒターにおいて、全身に107のマルマがあると体系化されました。

傷つけてはならない場所から生まれた知恵

マルマの知識は、もともと外科手術や戦傷の治療、武術の文脈で発達しました。

ここを深く傷つけると命に関わる、という急所の地図として整理されたのが始まりです。

南インドの武術カラリパヤットでも、マルマの知識が受け継がれてきたことで知られています。

そこから転じて、この要所を丁寧に扱い、やさしく整えれば、心身の調和を支える入り口になるという発想が生まれました。

組織と結果による分け方

マルマは、どの組織が中心になっているかで分けられます。

分類中心となる組織
マーンサ・マルマ筋肉
シラー・マルマ血管
スナーユ・マルマ靱帯・腱
アスティ・マルマ骨
サンディ・マルマ関節

スシュルタ・サンヒターは、傷ついたときに何が起きるかでもマルマを分けています。

すぐに命に関わるもの、時間をおいて命に関わるもの、障害を残すもの、強い痛みを生むもの、といった分け方です。

もともと外科の知識だったことが、この分け方からもよく分かります。

3つの大マルマ

数あるマルマの中でも、頭、心臓、膀胱の3つは特別に重く扱われてきました。

チャラカ・サンヒターでは、この3つをトリマルマ(3つのマルマ)として挙げ、とくに守るべき要所としています。

膀胱を意味するバスティは、薬用の浣腸を用いる処置バスティと同じ言葉です。

ツボとの違い

マルマは、東洋医学のツボ(経穴)とよく比べられます。

ツボは、中国医学の経絡の上にある点として整理されてきました。

マルマはアーユルヴェーダの解剖の知識から生まれ、点というより、指の幅で大きさを測る広がりを持った領域として記されています。

似た発想を持ちながら、成り立ちも数え方も別の体系です。

マルマ療法という手当て

現代のアーユルヴェーダ施設やサロンでは、マルマをオイルでやさしく刺激するマルマ療法(マルマトリートメント)が行われています。

強く押し込むのではなく、穏やかに触れて円を描くように働きかけるのが特徴とされます。

全身のオイルマッサージであるアビヤンガと組み合わせて行われることも多くあります。

眉間にあるスタパニーや、手のひらと足裏の中心にあるタラフリダヤは、施術の中でよく意識されるマルマです。

足裏のマルマは、足のオイルマッサージ(パーダビヤンガ)の文脈でも語られてきました。

とくに、不安定になりやすいヴァータを鎮める手当てとして語られることが多く、本格的な浄化法パンチャカルマの一連の手当ての中で取り入れられることもあります。

受けるときの心構え

マルマは、強い刺激ほど良いわけではありません。

むしろ穏やかさが本質とされ、繊細な場所に働きかける技法だからこそ、経験と知識のある施術者のもとで受けることがすすめられます。

持病がある方や妊娠中の方は、事前に施術者や専門家へ相談してください。

本項目は伝統的な考え方および一般的な情報の紹介であり、特定の効果・効能を保証したり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。

FAQよくある質問

マルマとは何ですか?

サンスクリット語で急所・要所を意味する、生命エネルギーが集まるとされる体のポイントです。筋肉・血管・靱帯・骨・関節が交わる場所と定義され、古典では全身に107あると説明されています。

マルマは東洋医学のツボと同じですか?

似た発想をもつ概念ですが、体系は別のものです。ツボ(経穴)は中国医学の経絡の上にある点であるのに対し、マルマはアーユルヴェーダの解剖学から生まれた概念で、もともとは外科や武術の文脈で「傷つけてはならない急所」として体系化されました。

マルマ療法とはどんなものですか?

マルマをオイルなどでやさしく刺激し、心身のバランスを整えることを目的とした伝統的なトリートメントです。強く押すのではなく、穏やかに触れるのが特徴とされます。施術は経験のある施術者のもとで受けることがすすめられます。

マルマは強く押したほうがよいのですか?

そうではないとされます。マルマはもともと傷つけてはならない急所として体系化された場所で、手当てでは穏やかに触れることが本質とされてきました。