アーユルヴェーダの用語・読みものを一語ずつ引けるオンライン辞典
生活・養生

リトゥチャリヤ

Ṛtucaryā / ऋतुचर्या

Definition

季節ごとの過ごし方の養生のこと。季節によって移り変わるドーシャの影響に合わせて、食事や生活を調整するアーユルヴェーダの考え方。

この項目のポイント

  • リトゥチャリヤは「季節(リトゥ)の過ごし方(チャリヤ)」を意味する季節の養生
  • 古典はインドの六季を前提に、季節ごとにドーシャがたまり、乱れ、静まる流れを説く
  • 春にあたるヴァサンタ・リトゥは、冬にたまったカパが動き出す季節とされる
  • 季節のつなぎ目(リトゥサンディ)は、過ごし方を少しずつ切り替える時期とされる
  • 1日の養生ディナチャリヤと対になる、アーユルヴェーダの予防的な生活術

季節の変わり目に体がついてこない方へ

春先はなぜか眠くてだるい。

梅雨は体が重く、冬は肌も気持ちも乾いてくる。

季節によって体の調子が変わるのは、気のせいではありません。

アーユルヴェーダは、その揺れを前提に、季節ごとの過ごし方をまとめてきました。

リトゥチャリヤとは

リトゥチャリヤ(Ṛtucaryā)とは、季節を意味するリトゥと、過ごし方や行いを意味するチャリヤを合わせた言葉で、季節ごとの養生法を指します。

季節が移り変わると自然界の性質が変わり、それに応じて私たちのドーシャのバランスもゆらぐと考えます。

そのゆらぎを見越して、食事や生活を先回りで調整するのがリトゥチャリヤです。

古典の六季

古典は、インドの気候にもとづく6つの季節(リトゥ)を前提に説かれています。

季節おおよその性質半年の区分
シシラ晩冬。寒さが最も厳しい体の力が奪われていく半年(アーダーナ)
ヴァサンタ春。寒さがゆるむ同上
グリーシュマ夏。暑さと乾きが強い同上
ヴァルシャ雨季。湿って重い体の力が養われていく半年(ヴィサルガ)
シャラト秋。雨が上がり日差しが強まる同上
ヘーマンタ初冬。冷えはじめる同上

太陽と風が強まり大地と体から潤いを奪っていく半年をアーダーナ、月の働きが強まり潤いと力を戻していく半年をヴィサルガと呼びます。

体の力は夏から雨季にかけて最も落ち、初冬から晩冬にかけて最も充実するとされます。

ドーシャがたまり、乱れ、静まる流れ

季節とドーシャの関係は、たまる、乱れる、静まるという3つの段階で説明されます。

ドーシャたまる季節乱れる季節静まる季節
ヴァータ夏雨季秋
ピッタ雨季秋初冬
カパ晩冬春夏

たまった段階で整えておけば、乱れる季節を穏やかに越えやすい、という考え方です。

この段階の考え方は、病が進む6段階(シャット・クリヤー・カーラ)の入り口とも重なっています。

季節ごとの浄化として、春にはヴァマナ、秋にはヴィレーチャナ、雨季にはバスティが向くとされてきました。

いずれも医師の管理を前提とした処置です。

日本の気候での読み替え

大切なのは暦ではなく気候の性質です。

日本なら、乾燥した冬から春の風の強い時期はヴァータ、梅雨はカパ、盛夏はピッタというように、その土地の気候で読み替えて使われています。

高まりやすいドーシャを鎮める選択をする、という考え方はシンプルです。

乾燥した寒い時期には、温かく油分と水分のある食事と十分な休息を。

盛夏には、涼しさと甘味のある食べものと、無理をしない過ごし方を。

湿った季節には、軽く温かい食事と、体を動かす習慣を。

日本の四季と梅雨に合わせた具体的な過ごし方は、梅雨がだるい、冬が冷えるにまとめています。

ヴァサンタ・リトゥ(春)

ヴァサンタ・リトゥ(Vasanta Ṛtu)は、六季のうち春にあたる季節です。

古典的にはおおむね2月半ばから4月半ばごろにあたるとされますが、暦の流派によって区切り方には幅があります。

日本の気候なら、冬の寒さがゆるみはじめ、花粉や眠気が気になりだす時期に近いと読み替えられています。

冬にたまったカパが動き出す

冬のあいだ、寒さと重さの性質を持つカパは体内にたまりやすいとされます。

春になって日差しが強まると、たまっていたカパが溶けるようにゆるんで動き出すと説明されます。

だるさ、眠気、鼻や喉の不快感といった春先の不調は、この動き出したカパと結びつけて語られてきました。

消化の火(アグニ)も弱まりやすい時期とされます。

春にすすめられる過ごし方

すすめられること控えるとされること
体を動かす、粉でこするウドワルタナ昼寝(ディヴァスワプナ)
軽く温かい食事、古い穀物、蜂蜜重い、油っぽい、甘い、酸っぱい食べもの
カヴァラやドゥーマパーナなど頭と口の手入れ冷たいものをとりすぎること

乱れが強い場合の本格的な対処としては、パンチャカルマのうち上部からの排出処置であるヴァマナが、この季節に向くとされてきました。

家庭で行えるものではなく、医師の管理が前提です。

リトゥサンディ(季節のつなぎ目)

リトゥサンディ(Ṛtu Sandhi)は、前の季節の終わりと次の季節の始まりが重なる時期を指します。

古典の説明では、前の季節の最後の7日と次の季節の最初の7日、合わせて2週間ほどがこの時期にあたります。

なぜ不調が出やすいのか

前の季節にたまったドーシャが、次の季節の性質によって動き出すためと説明されます。

冬にためたカパが春に動く、夏にためたヴァータが雨季に乱れる、という具合です。

季節の変わり目に体調を崩しやすいのは、この流れの中で読むと自然なことになります。

少しずつ切り替える

この時期は、前の季節の過ごし方を少しずつ減らし、次の季節の過ごし方を少しずつ増やします。

ある日から急に切り替えるのではなく、重なりを作るのがリトゥチャリヤの作法とされます。

衣替えを一度に済ませず、薄手と厚手を行き来しながら替えていく感覚に近いものです。

ディナチャリヤとの関係

リトゥチャリヤは、1日の過ごし方の養生であるディナチャリヤと対になる概念です。

1日のリズムを整えるのがディナチャリヤ、1年のリズムを整えるのがリトゥチャリヤです。

どちらも、不調が起きてから対処するのではなく、先回りして整える予防的な生活術として位置づけられています。

本項目は伝統的な考え方および一般的な情報の紹介であり、特定の効果・効能を保証したり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。体調の不調が続く場合は、医師などの専門家にご相談ください。

FAQよくある質問

リトゥチャリヤとは何ですか?

サンスクリット語で季節を意味するリトゥと、過ごし方を意味するチャリヤを合わせた言葉で、季節ごとの養生法を指します。季節によって高まりやすいドーシャが変わると考え、それに合わせて食事や生活を調整するアーユルヴェーダの知恵です。

季節の変わり目にいつも体調を崩すのは、気のせいですか?

気のせいとは考えられていません。アーユルヴェーダでは季節のつなぎ目をリトゥサンディと呼び、前の季節にたまったドーシャが動き出しやすい時期として、特に注意深く過ごすべきとしてきました。

日本の気候でも実践できますか?

できます。インドの六季をそのまま当てはめるのではなく、乾燥して風が強い時期はヴァータ、蒸し暑い盛夏はピッタ、湿って重い梅雨はカパというように、その土地の気候の性質で読み替えるのが実践的とされています。