古典・歴史4つのヴェーダの違いと、アーユルヴェーダの居場所
リグ・サーマ・ヤジュル・アタルヴァという4つのヴェーダの違いを整理し、アーユルヴェーダがどこに位置づけられるのかを解説します。ウパヴェーダとヴェーダーンガの枝分…
Veda / वेद
Definition
古代インドに伝わる知識の集成。アーユルヴェーダはその流れに位置づけられる。
この項目のポイント
アーユルヴェーダを調べていくと、ヴェーダという言葉に何度も出会います。
名前に入っているのだから深い関係があるはず、という直感はそのとおりです。
ヴェーダ(Veda)は知識を意味し、古代インドに伝わる文献群の総称です。
もとは書かれたものではなく、師から弟子へ声で唱え継がれてきました。
人が作ったものではなく聖仙が聞き取ったものとして、天啓聖典(シュルティ)と呼ばれます。
| 名前 | 中心となる内容 |
|---|---|
| リグ・ヴェーダ | 神々への讃歌。4つの中で最古とされる |
| サーマ・ヴェーダ | 讃歌に旋律をつけた歌詠 |
| ヤジュル・ヴェーダ | 祭式で唱える祭詞と手順 |
| アタルヴァ・ヴェーダ | 治癒や日常生活に関わる呪文と讃歌 |
それぞれのヴェーダは、讃歌の本体に加えて、祭式の解説や哲学的な思索の部分を後から積み重ねていきました。
ウパニシャッドと呼ばれる哲学の文献も、この積み重ねの最後の層にあたります。
アーユルヴェーダは、生命(アーユス)の知識(ヴェーダ)という名前のとおり、この流れの中に自分を置いてきました。
なかでも結びつきが強いとされるのが、アタルヴァ・ヴェーダです。
病や傷を癒やす讃歌、薬草への呼びかけが多く含まれているため、医学の源流とみなされてきました。
アーユルヴェーダの神として祀られるダンヴァンタリも、こうした神話の世界の中で語られてきた存在です。
ヨガも同じヴェーダの世界観を背景に持ちます。
ヨーガ・スートラとアーユルヴェーダの古典に、トリグナのような共通の用語が出てくるのはそのためです。
ヴェーダを正しく発音し、理解し、儀礼に用いるために整えられた補助学の総称が、ヴェーダーンガ(Vedāṅga)です。
アンガは肢体を意味し、ヴェーダを一つの身体にたとえたときの手足にあたる学問、という位置づけを表しています。
伝統的に次の6つが数えられます。
声で伝える聖典だからこそ、一音の発音や韻律の崩れを防ぐ学問が必要とされました。
ジョーティシュは、正しい時を見定める役割から「ヴェーダの眼」と呼ばれてきたと伝えられます。
ヴェーダに付随する応用的な知識体系の総称が、ウパヴェーダ(Upaveda)です。
ウパは近い、副次的なといった意味を持ちます。
ヴェーダーンガがヴェーダを読み解くための学問なら、ウパヴェーダは生活の中で使われる実践の知識です。
伝統的には次の4つが挙げられることが多いものの、文献によって顔ぶれは異なります。
アーユルヴェーダは、アタルヴァ・ヴェーダのウパヴェーダとされるのが一般的です。
ただしリグ・ヴェーダに結びつける説明も伝えられており、一つに定まってはいません。
| 役割 | 含まれるもの | |
|---|---|---|
| ヴェーダーンガ | ヴェーダを読み解くための学問 | 音声学・韻律・文法・語源学・祭式学・天文暦法 |
| ウパヴェーダ | ヴェーダに付随する応用の知識 | 医学・兵法・音楽・建築など |
この整理を知っておくと、アーユルヴェーダとジョーティシュの関係がすっきり見えてきます。
ジョーティシュはヴェーダーンガ、アーユルヴェーダはウパヴェーダです。
両者は同じヴェーダの流れを背景に持ちながら、別の枠に置かれてきた体系だといえます。
本項目は伝統的な考え方の紹介であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。
ヴェーダとは何ですか?
知識を意味する語で、古代インドに伝わる文献群の総称です。リグ・ヴェーダ、サーマ・ヴェーダ、ヤジュル・ヴェーダ、アタルヴァ・ヴェーダの4つがあります。
アーユルヴェーダとヨガが姉妹科学と呼ばれるのはなぜですか?
どちらもヴェーダを背景とする世界観を共有しているためです。トリグナやプラーナのように、両方の文献に共通して出てくる用語も多くあります。ただし文献の系譜は別で、一方が他方の一部というわけではありません。
ウパヴェーダとヴェーダーンガはどう覚えればよいですか?
ヴェーダーンガはヴェーダを読むための道具、ウパヴェーダはヴェーダから生活へ広がった応用、と分けると整理しやすくなります。アーユルヴェーダは後者、ジョーティシュは前者に入ります。