古典・歴史アーユルヴェーダとヨガの祖とされる6人|系譜の整理
チャラカ、スシュルタ、ヴァーグバタ、アートレーヤ、ダンヴァンタリ、パタンジャリ。アーユルヴェーダとヨガの古典に登場する6人の名前と系譜を整理し、混同しやすいポイ…
Āyurveda / आयुर्वेद
Definition
インド発祥の伝統医学で、サンスクリット語の「生命(アーユス)」と「知識(ヴェーダ)」を合わせた「生命の科学」を意味する。病気を治すことより、体質に合わせて健やかさを保つ予防的な知恵を中心とする。
この項目のポイント
アーユルヴェーダ(Āyurveda)とは、インド発祥の伝統医学です。
サンスクリット語で「生命」を意味するアーユス(*āyus*)と、「知識・科学」を意味するヴェーダ(*veda*)を合わせた言葉で、直訳すれば「生命の科学」。
病気になってから治すことよりも、一人ひとりの体質に合わせて日々を整え、健やかさを保つことを重視する、予防的な知恵の体系です。
アーユルヴェーダの起源は3000年以上前にさかのぼるとされます。
内科の古典チャラカ・サンヒターや外科の古典スシュルタ・サンヒターといった文献は、紀元前後にはすでに体系化されていたと考えられています。
中国医学、ユナニ医学と並んで、世界三大伝統医学の一つに数えられます。
現在もインドやスリランカでは、専門の大学で学んだ医師が担う医学として制度化されています。
体の調子が悪いと気持ちも沈み、心配ごとがあると食欲が落ちる。
体と心は別々ではない、と多くの人が日々感じています。
アーユルヴェーダは、その感覚を生命の定義そのものに組み込んでいます。
チャラカ・サンヒターは、生命(アーユス)を、身体・感覚器官・心・魂の4つが結びついている状態と定義しました。
体だけが元気でも、4つの結びつきが揺らいでいれば、生命としては整っていない。
この見方が、食事や運動だけでなく、感覚の使い方や心の在り方までを養生に含める理由になっています。
インドリヤ(Indriya)は、感覚器官を指します。
目・耳・鼻・舌・皮膚の5つの知覚器官と、話す、つかむ、歩く、排泄する、生殖するといった働きを担う5つの行動器官に分けて語られます。
長時間画面を見たあとの、目の奥の疲れや頭のざわつき。
あれは、感覚の食べすぎのようなものです。
チャラカ・サンヒターは、病の主な原因の一つとして、感覚と対象との不適切な結びつきを挙げています。
使いすぎ、使わなすぎ、誤った使い方の3つです。
大きな音を聞き続けることは使いすぎ、ほとんど目を使わない暮らしは使わなすぎ、と読み替えることができます。
感覚を内側に向ける練習であるプラティヤーハーラが、ヨガの八支則に含まれているのも、同じ発想から来ています。
マナス(Manas)は心を指します。
インドリヤが受け取ったものを処理し、アートマンへとつなぐ役割を持つとされます。
チャラカ・サンヒターでは、感覚が対象に触れても、心が向いていなければ知覚は起こらない、という形で心の存在が説明されます。
考えごとをしながら食べると、味を覚えていない。
そんな身近な経験が、そのまま古典の心の説明になっています。
体をドーシャで見るのに対し、心はサットヴァ・ラジャス・タマスという3つの質で見ます。
サットヴァは澄んで落ち着いた質、ラジャスは動きと興奮、タマスは重さと停滞の質とされます。
心を整えるとは、サットヴァの質を育てていくことだと考えられてきました。
アートマン(Ātman)は、変化する体や心の奥にあり、それらを見ている意識の中心とされるものです。
日本語では真我と訳されます。
マナスは移り変わる心の働きで、アートマンはその奥にあって変化しないもの。
両者は別のものとして区別されます。
古典では、アートマンそのものは変化せず、病むこともないとされます。
病むのは体と心であり、アートマンはそれを見ている側にある、という位置づけです。
ヨガの瞑想は、この意識の中心に向かう実践として位置づけられます。
スワスターヤ(Svāsthya)は健康を指す言葉です。
語源は「自分自身(スヴァ)に位置している(スタ)」という意味を持ちます。
健康とは、外から何かを足すことではなく、本来の自分に戻っていること。
言葉そのものが、そう語っています。
スシュルタ・サンヒターには、健康な人(スワスタ)の条件が挙げられています。
前の4つは体の条件、最後の1つが心の条件です。
病気でないことではなく、心が澄んでいることまで含めて健康と呼ぶ。
チャラカの生命の定義とスシュルタの健康の定義は、同じ4つの結びつきを別の角度から見ていると読めます。
チャラカ・サンヒターも、アーユルヴェーダの目的を、健康な人の健康を守ることと、病む人の病を鎮めることの2つに置いています。
健康を守る側の具体的な知恵は、スワスタ・ヴリッタの項にまとめています。
アーユルヴェーダの見方の中心には、ドーシャと呼ばれる3つの生命エネルギー(ヴァータ・ピッタ・カパ)があります。
生まれ持ったその配合が体質(プラクリティ)となり、食事や季節、生活によってバランスがゆらぐと不調につながる、と考えます。
もう一つの柱が消化力(アグニ)で、何を食べるかと同じくらい、どう消化されるかを重視するのが特徴です。
アーユルヴェーダには、体にたまったものを取り除く浄化法(パンチャカルマ)のような本格的な手当てもあります。
けれど、その土台にあるのは日々の暮らしです。
1日の過ごし方(ディナチャリヤ)、季節の過ごし方、体質に合わせた食事。
特別な誰かのための医学ではなく、毎日の選択を少しずつ整えるための物差しとして、現代の暮らしにも取り入れられています。
日本ではオイルマッサージやシロダーラなどのリラクゼーションとして知られることが多いものの、本来は生活全体を扱う体系です。
なお、日本国内では医療としての制度はなく、あくまで健康の保持増進のための伝統的な知恵として親しまれています。
体調に不安がある場合は、医療機関への相談が前提となります。
本項目は伝統的な考え方および一般的な情報の紹介であり、特定の効果・効能を保証したり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。
アーユルヴェーダとは何ですか?
インド発祥の伝統医学で、サンスクリット語で生命を意味するアーユスと、知識を意味するヴェーダを合わせた「生命の科学」を意味します。体質に合わせた食事や生活、浄化法などを通じて、健やかさを保つことを重視する体系です。
アーユルヴェーダはどれくらい古いのですか?
起源は3000年以上前にさかのぼるとされ、チャラカ・サンヒターやスシュルタ・サンヒターといった古典が紀元前後には編纂されていたと考えられています。中国医学・ユナニ医学と並ぶ世界三大伝統医学の一つに数えられます。
アーユルヴェーダはマッサージのことですか?
オイルマッサージ(アビヤンガ)やシロダーラは施術の一部で、本来は食事・睡眠・季節の過ごし方・心の在り方までを含む、生活全体の体系です。日本ではリラクゼーションとして知られますが、インドやスリランカでは国家資格をもつ医師が担う医学として制度化されています。
アーユルヴェーダでは、病気でなければ健康なのですか?
そうとは考えません。スシュルタ・サンヒターの健康の定義には、ドーシャや消化の均衡に加えて、心と感覚と魂が安らいでいることが含まれます。体に異常がなくても、心が落ち着かない状態は健康の手前と見る枠組みです。