アーユルヴェーダの用語・読みものを一語ずつ引けるオンライン辞典
古典・歴史

ジョーティシュ

Jyotiṣa / ज्योतिष

Definition

古代インドに伝わる天文・暦法の学問で、インド占星術とも訳される。ヴェーダを学ぶための補助学(ヴェーダーンガ)の一つ。

この項目のポイント

  • ジョーティシュは光を意味する語に由来し、天体の運行を扱う学問を指す
  • ヴェーダを正しく学び儀礼の時を定めるための補助学(ヴェーダーンガ)の一つに数えられる
  • アーユルヴェーダとは出自を同じくする関係にあるが、体系としては別のもの
  • 太陽の動きで12に分けるラーシと、月の動きで27に分けるナクシャトラを重ねて時を測る
  • 生まれた日時と場所から作るジャナマ・クンダリは、観察で体質を見るアーユルヴェーダのプラクリティとは根拠が異なる

ジョーティシュとは

ジョーティシュ(Jyotiṣa)は、古代インドに伝わる天文・暦法の学問です。語源は光を意味するジョーティス(jyotis)で、天体の運行を観察する知識という意味合いを持ちます。日本語ではインド占星術、ヴェーダ占星術と訳されることが一般的です。

もともとの役割は、暦を定めることと、祭祀を行うのにふさわしい時を選ぶことにありました。そのため伝統的に「ヴェーダの眼」と呼ばれてきたと伝えられます。

ヴェーダの中での位置づけ

ヴェーダを学び伝えるために、6つの補助学が整えられました。これをヴェーダーンガといい、音声学・韻律・文法・語源学・祭式学、そしてジョーティシュがこれにあたります。

一方、アーユルヴェーダはウパヴェーダ、すなわちヴェーダに付随する応用的な知識体系の一つに数えられます。

つまり両者は、同じヴェーダの流れを背景に持ちながら、位置づけの異なる別々の体系です。姉妹分野と呼ばれることがあるのはこの共通の出自によるもので、一方が他方の一部というわけではありません。

扱う内容

ジョーティシュは大きく次の要素で構成されます。

ラーシ(12の区分)

ラーシ(Rāśi)は、天球を12に分けた区分です。

西洋占星術でいう12星座にあたり、牡羊にあたるメーシャを起点に、それぞれ名称が付けられています。

名称はおおむね対応していますが、区分の基準の取り方が異なります。

基準呼び方
インドの伝統実際の星の位置サイデリアル(ニラヤナ)
西洋占星術春分点トロピカル(サーヤナ)

地球の歳差運動によって春分点は少しずつ移動しており、両者の差は現在およそ24度あります。

星座1つ分に近い開きなので、同じ生年月日でも割り当てられる区分が一つずれることがあります。

インド式で調べると自分の星座が違っていて驚くことがあるのは、このためです。

ナクシャトラ(27の月宿)

ナクシャトラ(Nakṣatra)は、月の運行を基準に天球を27に分けた区分です。

日本語では月宿と訳されることもあります。

月は約27.3日で天球を一周するため、1つのナクシャトラをおよそ1日で通過する計算になり、日ごとの区切りとして使いやすい単位でした。

アシュヴィニーを起点として順に並べられ、文献によっては28を数えることもあります。

分割数基準
ラーシ12太陽の見かけの動き
ナクシャトラ27月の動き

インドの伝統では、この2つが併用されてきました。

太陽と月という2つの周期を重ねることで、より細かく時を測ることができたためです。

主な用途は暦と日取りで、祭祀や行事にふさわしい日を定めるムフールタの考え方と組み合わされてきました。

ジャナマ・クンダリ(出生図)

ジャナマ・クンダリ(Janma Kuṇḍalī)は、生まれた日時と場所における天体の配置を図にしたものです。

ジャナマは誕生、クンダリは図表を意味し、西洋占星術でいう出生図、ホロスコープにあたります。

作図には、生まれた日付・時刻・場所の3つが必要です。

時刻によって図の起点が変わるため、正確な出生時刻が重視されます。

図には、12のラーシ、9つのナヴァグラハがどの区分にあるか、そしてバーヴァと呼ばれる12の室が描かれます。

北インドと南インドでは図の描き方が異なり、同じ内容でも見た目が違うものになります。

アーユルヴェーダの体質とは別物

ジャナマ・クンダリとアーユルヴェーダの体質(プラクリティ)は、混同されやすいところです。

何から判断するか
ジャナマ・クンダリ生まれた日時と場所
プラクリティ体つき・消化・肌・睡眠・気質などの観察できる特徴

ドーシャのバランスは受胎のときに決まるとされますが、それを知る方法は身体の特徴を見ることであって、天体の配置を計算することではありません。

同じインドに由来していても、判断の根拠がまったく異なる別の体系です。

アーユルヴェーダとの接点

古典の中には、両者が重なる箇所がいくつかあります。

季節ごとの過ごし方を説くリトゥチャリヤーや、一日の過ごし方を説くディナチャリヤーは、太陽と月の運行にもとづく時間の区切りを前提としています。夜明け前の時間帯を指すブラフマムフルタという語も、時間の単位であるムフールタから来ています。

また伝統の中には、グラハとドーシャを対応づける記述も見られます。ただしその対応は文献によって異なり、一定していません。

アーユルヴェーダの養生そのものは、体質・季節・消化の状態といった観察できる要素にもとづいて組み立てられており、天体の知識がなくても成り立ちます。

本項目は伝統的な考え方の紹介であり、運勢や吉凶を判断するものではありません。また医学的な診断・治療を目的とするものでもありません。体調に不安がある場合は専門家にご相談ください。

FAQよくある質問

ジョーティシュとは何ですか?

古代インドに伝わる天文・暦法の学問です。ジョーティシュ(Jyotiṣa)は光を意味する語に由来し、天体の運行を観察して暦を定め、儀礼を行う時を選ぶ知識として発達しました。今日ではインド占星術、ヴェーダ占星術と訳されることが多い分野です。

ジョーティシュとアーユルヴェーダはどう違いますか?

位置づけが異なります。ジョーティシュはヴェーダを学ぶための補助学(ヴェーダーンガ)の一つ、アーユルヴェーダはヴェーダに付随する知識体系(ウパヴェーダ)の一つとされます。どちらもヴェーダの流れを背景に持ちますが、扱う対象は前者が天体と時、後者が生命と健康であり、別々の体系として伝えられてきました。

アーユルヴェーダを学ぶのにジョーティシュの知識は必要ですか?

必須ではありません。アーユルヴェーダの養生は、体質・季節・一日のリズムといった観察できる要素にもとづいて組み立てられており、それだけで完結します。ただし古典の中には、季節や時の選び方の記述に暦の考え方が重なる部分があり、背景として知っておくと理解の助けになることがあります。

生年月日からドーシャ(体質)は分かりますか?

アーユルヴェーダの考え方では分かりません。体質を見るのは体つき・消化・肌・睡眠・気質といった観察できる特徴からで、生まれた日時を用いるのはジョーティシュの出生図のほうです。両者は根拠の異なる別の体系です。