古典・歴史ヨーガ・スートラをどこから読むか|四章の地図とつまずきやすい3か所
ヨーガ・スートラは全4章で構成されますが、頭から順に読むと途中で止まりやすい文献です。各章に何が書かれているか、どこから読むと入りやすいか、そして誤解されやすい…
Yoga Sūtra / योगसूत्र
Definition
パタンジャリの名で伝わるヨガの根本経典。ヨーガを心の働きを止めることと定義し、八支則を示した全4章の箴言集。
この項目のポイント
インドの六派哲学のひとつ、ヨーガ学派の根本経典です。パタンジャリの名で伝えられ、全4章、およそ195節(版によって196節)の短い箴言(スートラ)から成ります。成立年代には諸説があり、紀元前後から紀元後4世紀から5世紀ごろまで幅を持って語られます。
第1章の冒頭近くで、ヨーガとは心の働きを止めることである、と定義されます。姿勢や呼吸の技法書ではなく、心を扱う書物として書かれている点が、現代の一般的なヨガのイメージとの大きな違いです。
アーサナに割かれているのは第2章の終盤の数節だけです。八支則の中では、感覚を内に向けるプラティヤーハーラから集中、瞑想へと進む後半に、より多くの記述が割かれています。
箴言はきわめて短く、それ単独では意味が取りにくい形をしています。そのため伝統的には、ヴィヤーサに帰される『ヨーガ・バーシュヤ』をはじめとする注釈とあわせて読まれてきました。日本語で読む場合も、訳文だけでなく解説の付いた版が選ばれることが一般的です。
パタンジャリ(Patañjali)は、ヨーガ・スートラの著者、または編纂者として伝わる人物です。
ヨガを学ぶ人にとっては開祖のような存在ですが、その人物像ははっきりしていません。
生没年や経歴には諸説があり、成立年代と同じく、紀元前後から紀元後4世紀から5世紀ごろまで幅を持って語られます。
一人の哲学者なのか、先行する教えをまとめた編纂者の名なのか、複数世代にわたる学派の呼び名なのかについても、定説はありません。
文法書『マハーバーシャ』の著者パタンジャリと同一人物とする伝統的な説もありますが、時代の隔たりから別人とする見方が有力です。
ヨーガ・スートラに出てくる考え方の多くは、それ以前から伝わっていたものと考えられています。
パタンジャリの功績は、散らばっていた教えを短い箴言に凝縮し、八支則という実践の道筋に並べ直したところにあるとされます。
チャラカやスシュルタが医学の系譜に連なるのに対し、パタンジャリはヨーガ学派という別の系譜に属します。
一方で、古典の著者名を個人よりも学派や伝承の系譜を示す呼び名として読むのが一般的である点は、両者に共通します。
体を扱うか心を扱うかで役割は分かれますが、同じヴェーダの世界観を背景にしている点も同じです。
この文献はアーユルヴェーダの古典ではありません。チャラカ・サンヒターなどとは別の系譜に属します。ただしヴェーダを背景とする世界観を共有しており、トリグナやプラーナといった用語は両方の文献に出てきます。呼吸法や瞑想を養生の一部として扱うときに、この文献が参照されることがあるのはそのためです。
読み進め方とつまずきやすい点はヨーガ・スートラをどこから読むかにまとめています。
本項目は伝統的な思想を知識として紹介するものであり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。体調に不安のある方は専門家にご相談ください。
ヨーガ・スートラを読めばポーズが分かりますか?
ポーズの解説書ではありません。アーサナについての記述は第2章の数節だけで、具体的な姿勢の名前は出てきません。安定していて快適であること、という条件が述べられるにとどまります。
誰が書いたものですか?
パタンジャリの名で伝えられていますが、一人の著者なのか、先行する教えをまとめた編纂者の名なのかについては定説がありません。成立年代にも諸説あります。
アーユルヴェーダの古典に含まれますか?
含まれません。チャラカ・サンヒターなどとは別の系譜の文献です。ただし背景となる世界観が近く、両方に共通して出てくる用語が多くあります。