ブリハット・トラエー(大三部書)
Bṛhat Trayī / बृहत्त्रयी
Definition
チャラカ・スシュルタ・アシュターンガという三大古典の総称。
この項目のポイント
- 大三部書はチャラカ・サンヒター、スシュルタ・サンヒター、アシュターンガ・フリダヤの3つの総称
- 内科のチャラカ、外科のスシュルタ、両者を整理したヴァーグバタの3人は三大医聖と呼ばれる
- アシュターンガ・フリダヤの代わりに、同じヴァーグバタの名と結びつくアシュターンガ・サングラハを数える説明もある
- 後代の実務的な3書は小三部書と呼ばれ、大三部書の土台の上に整理された
大三部書とは
アーユルヴェーダの本を何冊か読むと、同じ古典の名前ばかりが出てくることに気づきます。
その感覚は正しく、出典として挙がる古典はほぼ3冊に集中しています。
大三部書(ブリハット・トラエー、Bṛhat Trayī)は、チャラカ・サンヒター、スシュルタ・サンヒター、アシュターンガ・フリダヤの3つをまとめた呼び名です。
ブリハットは大きい、トラエーは3つ組を意味します。
3冊の役割
チャラカ・サンヒターは、体質・予防・生活法から診断・治療までを記した内科の根本経典です。
ドーシャやアグニといった基本の考え方も、この書で詳しく論じられます。
スシュルタ・サンヒターは、切開や縫合の手技、手術器具、急所であるマルマの知識を伝える外科の古典です。
アシュターンガ・フリダヤは、7世紀ごろにこの2書の内容を整理し、詩の形式で簡潔にまとめたとされる要約書です。
3冊を名に冠する3人は、三大医聖と呼ばれます。
なぜこの3冊なのか
内科と外科という2本の柱があり、それを学びやすく束ねた1冊がある。
この組み合わせで、八部門と呼ばれるアーユルヴェーダの全分野がひととおり見渡せると考えられているからです。
後の時代の文献や注釈も、多くがこの3冊を土台にして書かれてきました。
なお、アシュターンガ・フリダヤの代わりに、同じヴァーグバタの名と結びつくアシュターンガ・サングラハを数える説明もあります。
どちらを採っても、内科・外科・その整理という3つの役割は変わりません。
小三部書との違い
| 大三部書 | 小三部書 | |
|---|---|---|
| 時代 | 古い | 大三部書より後 |
| 中心 | 理論と実践の土台 | 診断・製剤・素材の分類 |
| 書名 | チャラカ、スシュルタ、アシュターンガ・フリダヤ | マーダヴァ・ニダーナ、シャールンガダラ・サンヒター、バーヴァプラカーシャ |
大三部書が何をどう考えるかを示す土台なら、小三部書は診る・作る・選ぶという現場の仕事ごとに知識を整理し直した文献群です。
養生の考え方の出どころを確かめたいときは大三部書、ハーブの性質や製剤の手順を調べたいときは小三部書、と使い分けると迷いにくくなります。
読むときの心づもり
どの古典も、一人の著者が書き下ろしたものではなく、師から弟子へ受け継がれ、改訂を重ねて今の形になったと考えられています。
成立年代に幅があるのも、そのためです。
書かれている内容は千年以上前の医学であり、現代医学とは理論も前提も異なります。
日々の養生を見直すきっかけとして読むと、古い言葉の中に今の暮らしに通じる感覚が見つかります。
本項目は伝統的な考え方の紹介であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。
FAQよくある質問
大三部書とは何ですか?
チャラカ・サンヒター、スシュルタ・サンヒター、アシュターンガ・フリダヤの3つをまとめた呼び名です。アーユルヴェーダの理論と実践の土台とされ、現代の教育でも中心に置かれます。
初めて古典に触れるなら、どれから読むのがよいですか?
養生や体質の考え方を知りたいならチャラカ・サンヒター、全体を短く見渡したいならアシュターンガ・フリダヤが選ばれることが多いようです。いずれも日本語では解説付きの抄訳や入門書から入るのが一般的です。
カシュヤパ・サンヒターは大三部書に入りますか?
入りません。小児科の基礎資料として重視される古典ですが、伝存する部分が少なく、大三部書・小三部書のどちらにも数えないのが一般的です。