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古典・歴史

ラグ・トラエー(小三部書)

Laghu Trayī / लघुत्रयी

Definition

三大古典より後の時代にまとめられた、マーダヴァ・ニダーナ、シャールンガダラ・サンヒター、バーヴァプラカーシャの3つの文献の総称で、診断・製剤・素材の分類といった実用的な内容が中心。

この項目のポイント

  • 小三部書はマーダヴァ・ニダーナ、シャールンガダラ・サンヒター、バーヴァプラカーシャの総称
  • 大三部書より後の時代にまとめられ、診断・製剤・素材の分類といった実務的な内容が中心
  • マーダヴァ・ニダーナは7世紀から8世紀ごろの、診断に特化した文献とされる
  • シャールンガダラ・サンヒターは13世紀から14世紀ごろの、製剤の体系と脈診の記述で知られる文献とされる
  • バーヴァプラカーシャは16世紀ごろの、素材の分類が詳しい文献とされる

小三部書とは

小三部書(ラグ・トラエー、Laghu Trayī)は、マーダヴァ・ニダーナ、シャールンガダラ・サンヒター、バーヴァプラカーシャの3つをまとめた呼び名です。

ラグは小さい、トラエーは3つ組を意味し、三大古典をまとめた大三部書(ブリハット・トライー)と対になる名前です。

小さいといっても内容が軽いわけではなく、後の時代に、より実務に寄せて整理された文献群という位置づけです。

大三部書との関係

大三部書は、アーユルヴェーダの理論と実践の土台となる文献群で、現代の教育でも中心に置かれます。

小三部書は、それより後の時代にまとめられ、診断、薬の作り方、素材の分類といった実務的な内容が中心です。

土台を受け継いだうえで、診る、作る、選ぶという現場の仕事ごとに知識を整理し直した文献群といえます。

3書の比較

書名成立時期の目安特徴
マーダヴァ・ニダーナ7世紀から8世紀ごろとされる診断に特化し、多数の病態を枠組みに沿って整理
シャールンガダラ・サンヒター13世紀から14世紀ごろとされる剤形ごとの作り方を体系化、脈診の記述でも知られる
バーヴァプラカーシャ16世紀ごろとされる素材の分類が詳しく、新たに伝わった素材も扱う

成立した時代はそれぞれ数百年ずつ離れており、1冊ずつが、その時代の現場の関心を映していると考えられています。

診断の書マーダヴァ・ニダーナ

マーダヴァ・ニダーナ(Mādhava Nidāna)は、7世紀から8世紀ごろの文献とされ、小三部書の一つです。

著者はマーダヴァカラとされ、書名もその名に由来します。

診断に特化している点が最大の特徴です。

ニダーナ(原因)、プールヴァルーパ(前兆)、ルーパ(症状)、サンプラープティ(成り立ち)といった枠組みに沿って、多数の病態が整理されています。

ばらばらに語られていた病の見立てを、同じ物差しで並べ直した文献といえます。

診断の教科書として長く使われてきました。

製剤の書シャールンガダラ・サンヒター

シャールンガダラ・サンヒター(Śārṅgadhara Saṁhitā)は、13世紀から14世紀ごろの文献とされ、小三部書の一つです。

チュルナ(粉)やカシャーヤ(煎じ液)といった剤形ごとの作り方、分量、保存期間が体系的にまとめられています。

同じ素材でも、どんな形に仕立てるかで扱い方が変わるという考え方を、手順として示した文献です。

脈診についての記述が現れる文献としても知られ、後代の実践に大きな影響を与えました。

素材の書バーヴァプラカーシャ

バーヴァプラカーシャ(Bhāvaprakāśa)は、16世紀ごろにまとめられたとされる文献で、小三部書の一つに数えられます。

著者はバーヴァ・ミシュラとされます。

素材の性質を整理した部分(ニガントゥ)が充実しており、ハーブや食材の分類を調べるときに参照されます。

当時新たに伝わった素材についての記述が含まれる点も特徴です。

古典の知識が閉じたものではなく、時代ごとに新しいものを取り込みながら更新されてきたことを示す一冊といえます。

ラサーヤナなど、ほかの項目で素材の伝統的な位置づけをたどるときにも、手がかりになる文献です。

ニガントゥ(素材の辞典)

ハーブの本を読んでいると、同じ植物なのに呼び名がいくつもあって戸惑うことがあります。

その戸惑いは、昔の医師たちも同じように抱えていたものです。

ニガントゥ(Nighaṇṭu)は、ハーブや食材の名称、別名、性質を集めた辞典にあたる文献群です。

一冊の書名ではなく、時代ごとに編まれてきた本草書の総称として使われます。

何が書かれているか

素材ごとに、ラサ(味)、ヴィーリヤ(温冷)、ヴィパーカ(消化後の作用)、そしてどのドーシャに働くとされるかが整理されています。

もう一つの柱が、別名の一覧です。

地域や時代によって同じ植物が違う名前で呼ばれたり、似た植物が同じ名前で呼ばれたりするため、名前を突き合わせる作業が欠かせませんでした。

ニガントゥは、処方に書かれた名前を実物の素材へ正しく結びつけるための道具でもあったのです。

代表的なニガントゥ

よく名前が挙がるのは、ダンヴァンタリ・ニガントゥ、ラージャ・ニガントゥ、マダナパーラ・ニガントゥ、そしてバーヴァプラカーシャの中のニガントゥの部分です。

なかでもバーヴァプラカーシャのニガントゥは、現代の教育や解説書でも特によく参照されます。

新しく伝わった素材まで取り込んでいる点が、ほかの本草書と比べたときの特徴とされます。

もとはヴェーダの語彙集

ニガントゥという語は、もともとヴェーダに出てくる難しい語を集めた語彙集を指していました。

その語彙集に注釈を加えたのが、語源学ニルクタの文献です(ヴェーダーンガ)。

言葉を集めて意味を確かめるという営みが、のちに素材の名前と性質を集める本草書にも受け継がれたと考えられています。

本項目は伝統的な考え方の紹介であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。

FAQよくある質問

小三部書とは何ですか?

マーダヴァ・ニダーナ、シャールンガダラ・サンヒター、バーヴァプラカーシャの3つをまとめた呼び名です。いずれも大三部書より後の時代にまとめられ、実務的な内容が中心です。

大三部書との違いは何ですか?

大三部書が理論と実践の土台をなすのに対し、小三部書は診断、薬の作り方、素材の分類といった、現場で使うための整理が進んだ文献群です。

マーダヴァ・ニダーナにはどんな特徴がありますか?

診断に特化している点が最大の特徴です。原因・前兆・症状・成り立ちといった枠組みに沿って多数の病態が整理され、診断の教科書として長く使われてきました。

脈診はどの文献に出てきますか?

シャールンガダラ・サンヒターは、脈診についての記述が現れる文献として知られ、後代の実践に大きな影響を与えました。

ハーブや食材の性質を調べるならどの文献ですか?

バーヴァプラカーシャは素材の性質を整理した部分(ニガントゥ)が充実しており、ハーブや食材の分類を調べるときに参照されます。