マントラ
Mantra / मन्त्र
Definition
繰り返し唱えることで心を整えるとされる音や言葉。
この項目のポイント
- マントラは心を意味する語と、道具・守るものを表す語からなると説明される
- 意味を理解することより、音そのものの響きと反復が重視される
- オームはもっとも基本的なマントラで、ヨーガ・スートラでも唱えることが説かれる
- アーユルヴェーダでも、マントラは古典の治療の分類の一つに位置づけられてきた
同じ言葉を繰り返すと落ち着く
緊張する場面で、心の中で同じ言葉を何度も繰り返す。
それだけで、少し呼吸が整ってくる。
そうした感覚を持つ方は多いはずです。
インドの伝統では、音と言葉の繰り返しで心を一点に集めることを、マントラという技法として磨いてきました。
マントラとは
マントラ(Mantra)は、繰り返し唱えることで心を整えるとされる音や言葉です。
語源は、心や考えを表すマンと、道具や守るものを表すトラからなると説明されます。
心を運ぶ道具、あるいは心を守るもの、という読み方がよく紹介されます。
日本語では、真言と訳されてきました。
意味より響きと反復
マントラでは、意味を理解することより、音そのものの響きと反復が重視されます。
言葉の意味を考えると、考えはそこから広がっていきます。
音をただ繰り返していると、考えは広がらず、同じ一点に戻ってきます。
この戻ってくる働きが、ダーラナー(集中)の助けになるとされてきました。
瞑想(ディヤーナ)の対象として用いられるのも、この性質のためです。
オームという音
オームは、もっとも基本的なマントラとして知られています。
ア・ウ・ムの3つの音からなるとされ、その後に続く静けさまでを含めて一つの音と説明されます。
ウパニシャッドでは、ア・ウ・ムを目覚め・夢・深い眠りの状態に重ね、その先の静けさを本来の意識として語っています。
ヨーガ・スートラでは、オームを唱え、その意味を思い浮かべることが、心を整える道の一つとして説かれています。
唱え方の種類
| 唱え方 | やり方 | 伝統的な位置づけ |
|---|---|---|
| 声に出す | はっきりした声で唱える | 入りやすく、気がそれにくい |
| ささやく | 唇だけ動かすように小さく唱える | 声と心の中間 |
| 心の中で | 声を出さずに内側で繰り返す | より静かな段階とされる |
同じマントラを数珠で数えながら繰り返すことを、ジャパと呼びます。
インドの数珠は108の玉を持つものが広く使われています。
チャクラと音
チャクラの伝統では、それぞれのチャクラに対応する短い音が伝えられています。
種を意味するビージャから、ビージャマントラと呼ばれます。
ムーラーダーラからアージュニャーまで、下から順にLAM(ラム)、VAM(ヴァム)、RAM(ラム)、YAM(ヤム)、HAM(ハム)、OM(オーム)という音が、よく紹介される組み合わせです。
アーユルヴェーダとマントラ
マントラは、ヨガだけのものではありません。
チャラカ・サンヒターは治療を3つに分け、その一つであるダイヴァ・ヴィヤパーシュラヤ(目に見えない力に頼る治療)に、マントラを含めています。
食事や薬草を用いる治療、心を整える治療と並ぶ位置づけです。
体だけでなく、心の働きに目を向けるアーユルヴェーダの姿勢が、ここにも表れています。
ヴェーダの時代から続く唱える伝統が、医学の中にも組み込まれていたことが読み取れます。
無理なく取り入れるなら
意味や発音の正しさにこだわりすぎると、かえって心が忙しくなります。
まずは呼吸に合わせて、短い音を数回繰り返すだけで十分です。
声に出すか心の中で唱えるかは、その日の場所と体調で選んでかまいません。
本項目は伝統的な考え方の紹介であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。
FAQよくある質問
意味を知らないまま唱えてもよいのですか?
意味を理解することより、音そのものの響きと反復が重視される伝統があります。一方でヨーガ・スートラのように、唱えながらその意味を思い浮かべることを説く古典もあり、どちらか一方だけが正解というものではありません。
声に出さないといけませんか?
声に出して唱える方法、ささやくように唱える方法、心の中で唱える方法が伝統的に知られています。場所や体調に合わせて選ばれ、心の中で唱える方法がより静かな段階と説明されることがあります。
日本の真言とは関係がありますか?
真言はマントラを漢訳した言葉で、密教を通じて日本に伝わりました。インドの伝統と同じ根から、それぞれの土地で受け継がれてきたものと考えられています。