体にいいと紹介されたスパイスを試してみたのに、どうもしっくりこなかった。
逆に、たまたま使っていたものが自分にはよく合っている気がする。
同じスパイスでも、人によって印象が分かれます。
アーユルヴェーダは、この分かれ方を性質のちがいとして説明してきました。
分かれ目は効能ではなく性質
現代の紹介のしかたは、スパイスと効能を1対1で結ぶ形が多いです。
ターメリックは美容に、シナモンは血のめぐりに、という並べ方です。
アーユルヴェーダの古典は、この書き方をしません。
素材を味と温冷と消化後の作用という3つの物差しで分類し、そこから誰に向くかを導きます。
- スパイスと効能を1対1で結ぶ
- ターメリックは美容に
- 誰にでも同じものをすすめる形になる
- 味
- 温冷
- 消化後の作用
それぞれに古い呼び名がありますが、ここでは日本語のまま進めます。
くわしくは ハーブと食材を判断する3つのものさし にまとめています。
この物差しで見ると、同じ辛味のスパイスでも向く相手が変わります。
台所の12種 早見表
手に入りやすいものだけを並べました。
| スパイス | サンスクリット名 | 味 | 温冷 | 向きやすい | 控えめにしたい |
|---|---|---|---|---|---|
| ターメリック | ハリドラー | 苦・辛・渋 | 温 | カパ | 乾きが強いとき |
| クミン | ジーラカ | 辛 | 温 | 3体質に使いやすい | とくになし |
| コリアンダー | ダーニヤカ | 甘・渋 | 冷 | ピッタ | 冷えが強いとき |
| フェンネル | ミシュレーヤー | 甘・苦 | 冷 | ピッタ・ヴァータ | とくになし |
| カルダモン | エーラー | 辛・甘 | 温 | カパ・ヴァータ | ピッタの多用 |
| 黒こしょう | マリチャ | 辛 | 温 | カパ | ピッタ |
| ヒハツ | ピッパリ | 辛 | 温 | カパ・ヴァータ | ピッタ |
| 乾燥生姜 | シュンティ | 辛 | 温 | カパ・ヴァータ | ピッタ |
| シナモン | トヴァク | 辛・甘・渋 | 温 | カパ・ヴァータ | ピッタ |
| クローブ | ラヴァンガ | 辛・苦 | 冷 | ピッタ | 強い冷え |
| ヒング | ヒング | 辛 | 温 | ヴァータ | ピッタ |
| アジョワン | ヤヴァーニー | 辛 | 温 | ヴァータ・カパ | ピッタ |
温の列が多いのは、台所に残りやすいスパイスが保存性の高い辛味に寄るためです。
冷ます側はコリアンダーとフェンネル、そしてクローブの3つになります。
辛いのに冷ます側、クローブ
クローブは噛むと強い刺激があり、温めるものだと思われがちです。
ところが古典では、クローブは冷ます側に分類されています。
辛味と冷ますはたらきが同居する、めずらしい素材です。
辛いものは温める、と考えて選ぶとここでずれます。
- 噛むと強い刺激がある
- だから温めるものだと思う
- 黒こしょうと同じ側に置いてしまう
- 冷ます側に置かれている
- 辛味と冷ますはたらきが同居する
- めずらしい素材
熱がこもりやすい人が口のにおいの対策として使うなら、黒こしょうよりクローブのほうが理にかないます。
シナモンは2種類を分けて考える
シナモンとして売られているものには、セイロンとカシアの2系統があります。
古典でトヴァクと呼ばれてきたものは、セイロン系を指すことが多いとされています。
日本のスーパーで安く並ぶのはカシア系が中心です。
香りが強く料理には使いやすい一方、毎日まとまった量を続ける使い方は一般的ではありません。
続ける前提で選ぶならセイロン、料理の香りづけならカシア、という分け方が現実的です。
- 古典のトヴァクが指すのはこちら
- 続ける前提ならこの系統
- 日本のスーパーで安く並ぶのはこちら
- 香りが強く料理に使いやすい
- 毎日まとまった量を続ける形ではない
気になることから引く
表から選べないときは、こちらから入ってください。
| 気になること | まず見るもの | 理由 |
|---|---|---|
| 手足が冷える | 乾燥生姜・シナモン | 温める側で、消化の火を支えるとされてきた |
| 食後に重い | クミン・ヒハツ | 消化の力が落ちている状態に使われてきた |
| お腹が張る | アジョワン・ヒング・フェンネル | ヴァータの乱れに当てられてきた組み合わせ |
| のぼせ・肌の赤み | コリアンダー・フェンネル | 冷ます側なのでピッタに向く |
| 口のにおい | クローブ・カルダモン | 香りが強く、冷ます側と温める側で選べる |
| くすみが気になる | ターメリック | 苦味と温める性質を併せ持つ |
ここで挙げた対応は、症状を治すためのものではありません。
伝統的にその文脈で用いられてきた、という意味です。
合わないと感じたときの確認
表のとおりに選んだのに合わない。
そう感じたときは、スパイスそのもの以外に原因があることがあります。
組み合わせの問題か、単に食べ慣れていないだけか。
切り分け方は 同じ食材でも合う・合わないが分かれる理由 に3つの視点で書いています。
量と続け方
料理として自然な量で構いません。
多く摂れば効くという考え方はしないのが、この体系の前提です。
少量を毎日続けるほうが、伝統的な使い方に近くなります。
まず1つだけ選んで、2週間ほど同じものを使ってみてください。
始め方は 台所で始めるアーユルヴェーダ、味から選びたい場合は 6つの味ラサを食事に取り入れる が入口になります。
まとめ
スパイスに合う合わないがあるのは、体質のせいでも気のせいでもありません。
素材の側に温冷と味という性質があり、それが自分の状態と噛み合うかどうかの話です。
効能の一覧で選ぶのをやめて、温める側か冷ます側かだけでも見てみてください。
それだけで、選び方がかなり変わります。
本記事はアーユルヴェーダの伝統的な考え方を知識として紹介するものであり、特定の食品の効果効能を示すものでも、病気の診断・治療・予防を目的としたものでもありません。持病のある方、服薬中の方、妊娠中の方は、必ず医師などの専門家にご相談ください。

