アーユルヴェーダの用語・読みものを一語ずつ引けるオンライン辞典
ハーブ・生薬

ヒング(アサフェティダ)

Hiṅgu / हिङ्गु

Definition

独特の香りを持つ樹脂で、豆料理の重さをやわらげるとされる調味料。

ヒングとは

ヒング(Hiṅgu)とは、セリ科オオウイキョウ属の植物(*Ferula assa-foetida* など)の根から採れる樹脂を乾燥させた、インド料理に欠かせない調味料です。

英語ではアサフェティダ、日本では阿魏(あぎ)の名でも知られています。

原料の植物はイランやアフガニスタンなどの乾いた土地に育ち、インドで使われるヒングの多くは輸入されたものです。

封を開けた瞬間と油の中

ヒングを初めて手にした人は、たいてい封を開けた瞬間に驚きます。

生の状態では、硫黄を思わせるかなり強いにおいがするからです。

ところが、ひとつまみを熱した油に入れると、香りはがらりと変わります。

玉ねぎやにんにくを炒めたときのような、穏やかでうまみのある香りになります。

少量を油で熱してから使うのが基本とされるのは、この変化のためです。

粉のまま多く入れる素材ではありません。

豆料理とヒング

インドの豆料理には、必ずといってよいほどヒングが加えられます。

豆は重く、張りやすい食材だと考えられているからです。

ヒングはヴァータを鎮め、張りやガスをやわらげる目的で用いられてきました。

キチャリや豆のスープを作るときは、油にクミンなどの種のスパイスを入れ、香りが立ったところでヒングを加えるのが定番の順番です。

同じ目的でアジョワンと組み合わせて使われることもあります。

ねぎやにんにくの代わりとして

インドには、宗教上の理由から玉ねぎやにんにくを口にしない人々がいます。

ジャイナ教徒や一部のヒンドゥー教の伝統を守る家庭です。

そうした台所では、ヒングが玉ねぎやにんにくの香りの役目を担ってきました。

ほんのひとつまみで料理に奥行きが出るので、香味野菜を使わない料理を支える存在になっています。

古典が記す性質

ヒングについて伝えられている性質は、次のとおりです。

見る角度ヒングの場合
ラサ(味)辛味
グナ(性質)軽い、油性、鋭い
ヴィールヤ(温冷)温める
ヴィパーカ(消化後)辛味

軽く鋭く温める性質から、アグニ(消化の火)を焚きつけ、ヴァータとカパを鎮める方向に働くとされます。

一方で、熱を持つピッタは高める方向とされます。

ヒングヴァーシュタカという配合

ヒングの名を冠した配合として知られるのが、ヒングヴァーシュタカ・チュールナです。

八つの素材からなる粉末で、ヒングのほかに、トリカトゥの三つの辛味スパイス、二種類のクミン、アジャモーダ、岩塩(サインダヴァ)が合わせられます。

ギーと混ぜたご飯の最初のひと口に加えるという用法が伝えられています。

料理の調味料と養生の配合が、同じ素材でつながっている例です。

使う量と注意

ヒングは料理に使う量で十分に香りが立つ素材です。

鋭く温める性質を持つので、ほてりやすい方や暑い季節には量を控えめにするのが伝統的な考え方です。

妊娠中・授乳中の方、持病のある方、薬を飲んでいる方は、料理以外の目的で使う前に医師や専門家に相談してください。

本項目は伝統的な考え方の紹介であり、医学的な診断・治療を目的とするものではありません。

FAQよくある質問

ヒングのにおいが強すぎて驚きました。使っても大丈夫ですか?

生の状態のにおいが強いのは、ヒングの本来の性質です。少量を熱した油に入れると、玉ねぎやにんにくに近い穏やかな香りに変わります。保存は密閉できる容器に入れ、ほかの食品ににおいが移らないようにします。

ヒングを豆料理に入れるのはなぜですか?

豆の重さと張りやすさを補うためと説明されます。ヴァータを鎮め、張りやガスをやわらげる目的で用いられてきました。

粉末のヒングに小麦粉が入っているのはなぜですか?

樹脂のままでは固く香りも強すぎるため、市販の粉末の多くは小麦粉や米粉で薄めてあります。小麦を避けている方は、原材料の表示を確かめてから選んでください。